2021.06.12
テレビや新聞のニュースでよく見る山火事。山の近くに住んでいなければ、つい他人事と思いがちではないでしょうか。しかし、その山火事による影響は、決して他人事ではありません。今回は山火事の原因とその影響と起こさないための対策を紹介します。
「山火事」と聞いて、その原因をすべて答えられる人は少ないと思います。山火事が発生する原因は、大きく分けて2つあります。1つは焚火やタバコの不始末といった、人為的原因。2つ目は、乾燥や環境変動による自然発火です。それぞれの原因を詳しく見ていきます。
消防庁の統計資料によると原因別出火件数(平成27年~令和元年の平均データ)は、焚き火や火入れ、タバコなど人による不注意が原因の大半を占めています。2020年9月5日米カリフォルニア州南部で起きた大規模な山火事も花火の発煙装置が原因と報道されました。不注意だけでなく、放火のような悪意のある行為も原因の一つです。
またそれほど多くはないですが、焼き畑農業、農地や鉱山の開拓といった、暮らしのための活動が原因となる場合もあります。
自然発火2019年末ごろオーストラリア史上最悪とも言われた大規模な山火事は、自然発火が原因という説があります。この火事により多くの動物が命を落とし、住処を無くしました。では、自然発火はどうして起こるのでしょうか。
自然発火による山火事の多くは冬に発生します。冬は空気が乾燥し、木々の葉の水分がなくなっていることで火が付きやすい状態だからです。葉がこすれあい火が付いた後、その火が火種となり次々に周囲に燃え広がります。
その他にも落雷を主とする自然災害によるものや地球温暖化による空気や土壌の乾燥も、山火事の原因となっています。
山火事による地球環境への悪影響は一体どんなものがあるのでしょうか。
山火事による森林減少と砂漠化は、紙が作れなくなる、木になる作物が採れなくなるなど、私たちの生活に直接影響を及ぼします。
また、これまで雨が降った後に雨水を吸収する役割をしていた森林や土壌がなくなることで、水災害が起こりやすくなる危険もあります。
木が燃えることで二酸化炭素を吸収する植物が減り、二酸化炭素や温室効果ガスが増えます。二酸化炭素や温室効果ガスの増加によって地球全体の温度調整ができなくなることが、温暖化の原因となります。
温暖化により山火事が増えるので悪循環が生まれ、温暖化の加速につながります。
大気汚染は、二酸化炭素や温室効果ガスの増加によって引き起こされます。しかし、山火事の煙や木が燃えた灰も大気汚染の原因となります。
山火事によって影響を受けるのは、山に住む植物だけでなく、動物も同じです。山に住む動物を食べて生きるほかの動物や、山の動物を介して生息地を広げる植物にも影響を及ぼし、自然の生態系を崩してしまいます。
山火事の影響は、その山だけでなく地球全体に悪影響を及ぼします。では、どうしたら山火事を起こさないよう対策ができるのでしょうか。
個人でできる対策として大切なのは、山での花火や焚火、喫煙のあとは確実に火を消してごみを持ち帰り、人為的原因を生み出さないことです。
焼き畑農業や鉱山の開拓といった場合でも、とにかく火種を残さないことが大事です。
自然発火の山火事のうち、気候変動による発火については防ぐことができます。それは、気候変動の原因が私たちの毎日の環境負荷によるものだからです。環境負荷を抑えることで気候変動をやわらげ、その結果として山火事を減らせるのです。
山火事の対策として、山火事そのものを減らすことがもっとも大切です。
しかし、山火事が起きてしまった場合に森林減少を最小限に抑える方法、そして、森林を復元する方法についておこなわれている活動があるので紹介します。
ある企業では、山火事が発生した場合の早期発見を目的として、衛星画像やドローンの活用が検討されているそうです。
また、GPS機能の付いた携帯電話を使って、火災の被害状況を把握するシステムの構築や森林火災ハザードマップの作成など、情報の収集や共有のための取り組みもなされています。
企業の社会活動として、植栽をする企業は増えています。積極的に植栽をすることで山火事が防げるだけでなく、地球温暖化の防止につながります。
また、木が成長するまで時間がかかることを踏まえ、比較的育つのが早い種類の樹木がbaれることもあります。
万が一、火災が発生した際に燃え広がらないよう、植栽の時点で植える木の本数を制限して間引きすることもあります。
さらに最近では、日本発の国際非営利団体「weMORI(ウィモリ)」が、森林保全活動を
手軽に行えるアプリ「weMORI(ウィモリ)」を開発しました。
「weMORI」では、ユーザーがアプリ上で森林保全をおこなう学生団体や企業に寄付ができます。集まった寄付金によって再生した森林の面積や、削減できた二酸化炭素の総量などが表示され、いつでもその進捗や貢献度が確認できます。
山火事の延焼を防ぐ方法として、防火帯(ぼうかたい)を設置する工夫もされています。防火帯とは、燃える性質のものを含まない道路状の地域です。実際に、森林内を歩くための道路の役割も果たします。
防火帯を設置することで、山火事が発生した際に防火帯の外に火が燃え広がる恐れがなくなります。
山火事の原因のひとつである自然原因を取り除くには、とても時間がかかります。植栽が育つ時間だけでなく、気候変動が影響しなくなるまでとなると、気が遠くなるほどの時間です。
しかし、個人による小さな行動を地道に続けることが大切です。日ごろから、環境負荷への対策を意識した行動を重ねることで、その効果が出るまでの時間を短縮できます。
政府や団体でおこなわれている大きな活動の一方で、個人でできることとして、少しずつ地球環境に優しい行動をしていきましょう。