アグリテックとは?農業の未来を担う先進技術を知る|circu.(サーキュ)

2023.01.22

アグリテックとは?農業の未来を担う先進技術を知る

近年、さまざまな分野でICT(情報通信技術)が活用されています。なかでも注目を集めているのが、農業分野におけるICT活用です。農業とICTは、これまで縁遠い関係であると思われてきました。

しかし現在は、先進技術の活用が、農業分野が抱える問題を解決へ導く手段になると期待されています。そこでこの記事では、ICTを活用した農業「アグリテック」について解説します。

アグリテックとは

アグリテックは、農業を表す英語「アグリカルチャー」と、技術を表す英語「テクノロジー」を組み合わせた造語です。スマートアグリ、スマート農業などと呼ばれることもあります。

AI(人工知能)やドローンなどのICT技術を活用して、農業が抱える問題の解決や農業の活性化を目指すものです。

アグリテックが注目されている背景

農業は今、数々の問題を抱えています。それらの問題によって私たちの食生活が脅かされており、限られたリソースで生産性を上げるという必要に迫られています。

ここではこうした、アグリテックが注目されている背景である農業の問題について解説していきます。

農業従事者数の減少低下

農林水産省の発表によると、昭和35年(1960年)の日本の農業従事者数は1,175万人でした。年々その数は低下しており、令和3年(2020年)には136万人まで減っています。

農業従事者数減少の理由として、大きく3つの事項が考えられます。
1. 人口そのものの減少
2. 高齢化による労働人口の減少
3. 職業の選択肢が増加したことによる新規就農者数の減少

今後も同じ生産方法を続けた場合、農業従事者数の減少によって農作物の生産量・収穫量はますます減少することとなります。

ノウハウの継承が困難

これまで、農作物の生育に関するノウハウは各農家で口承によって受け継がれてきました。

その理由は、農業のノウハウは生育地域の気候や土壌、扱う農作物などによって異なり、独自技術となってしまうことがあるためです。このため、ノウハウを継承したり他の農家と知識を共有したりすることが難しくなっています。

食料自給率の低下

農林水産省の発表によると、令和3(2021)年の日本のカロリーベース食料自給率は38%で、食料の多くを輸入に頼っている状態と言えます。

昨今の長引く円安や海外情勢の緊迫などにより、食料自給率向上の必要性はさらに高まっています。

アグリテックが農業にもたらすメリット

農業に関する問題の解決策となるアグリテック。この先進技術は、農業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

人手不足問題の解消

ドローンによる農薬散布をはじめとした農作業の省力化によって、農業の人手不足が解消されます。「農業は重労働である」というこれまでのイメージが払拭され、新規就農者獲得に繋がります。

また、ICTを活用できる人材の活躍の場となり、さらなる人材獲得の機会となって農業の活性化に繋がる可能性もあります。

ノウハウの継承をしやすくする

これまで口頭伝承だったノウハウをシステム上にデータ保存することで、効率的に継承することや、家族以外の就農者に継承することもできるようになります。

また、ビッグデータへのノウハウの集積によって、農家間で知識が共有され、農作物の生育に関する失敗を減らすことも可能になります。技術の活用によって「経験の差」が縮まり、農業の発展がより加速するでしょう。

食料自給率の向上

アグリテックは、食料の多くを輸入に頼る日本に食料自給率の向上ももたらします。
例えば過去の災害データをもとに、天気予報に合わせた対策を行うことで、収穫量の向上が期待できます。育てた農作物を確実に収穫することは、食品ロス削減にも繋がります。さらに、ドローンやロボットの導入で労働力を増やせば、生産量の増加も可能になるでしょう。

環境負荷の低減

アグリテックを使った農業の効率化は、環境負荷低減に貢献します。例えば、農業機械の自動運転によって適切かつ最短ルートで農作業を行い、二酸化炭素排出量を削減します。また、これまで行っていた農薬散布車の使用をドローンに切り替えることで、さらなる二酸化炭素排出量の削減に繋げられます。

さらに、データ管理によって、化学肥料や農薬散布における「ムダ」をなくすことも可能となるでしょう。