パラスポーツをSDGsの視点で考えてみよう。パラスポーツを通してより良い社会実現へ|circu.(サーキュ)

2021.12.18

パラスポーツをSDGsの視点で考えてみよう。パラスポーツを通してより良い社会実現へ

パラリンピックをきっかけにパラスポーツに興味を持った方も増えた2021年。今回はパラスポーツの概要とパラスポーツが個人や社会に与える影響についてSDGsの視点からも考えていきます。これを機にパラスポーツを観戦したり、体験したりとさらに深くハマってくださる方が増え、SDGsについても考えるきっかけになれば嬉しいです。

パラスポーツとは

2021年の東京パラリンピック競技大会開催の影響もあり、障がい者スポーツの機運の高まり国民の関心が高まっている今、より親しみやすく、わかりやすい名称にするため、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会は2021年10月1日より「公益財団法人日本パラスポーツ協会」へ名称を変更しました。

それに伴い、これまで一般的に障がい者のスポーツとされる障がい者スポーツをパラリンピック競技か否かに関わらず、障がい者スポーツすべてをパラスポーツと呼ぶことになりました。

パラスポーツの「パラ」については諸説ありますが、英語の「パラレル(並行の、別々の)」という言葉から、「もう一つのスポーツ」という意味も込められているそうです。また、パラスポーツは、車いすバスケットボール、シッティングバレー、ブラインドサッカーなどのように障がい者だけでなく、健常者も一緒にプレイすることができるスポーツも増えており、障がい者だけのスポーツではなくなってきています。

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パラスポーツの過去と現在

パラスポーツの始まりは古く、紀元前から医師など治療やリハビリの一環としてスポーツを取り入れていたと記録に残されています。そこから楽しむためのスポーツとなったのは、1888年にドイツで​​聴覚障がい者のためのスポーツクラブが創設されたところからとなります。

楽しむスポーツから競技性の高いスポーツヘも広がりを見せたのは、第二次世界大戦後に負傷した兵士の治療と社会復帰を目的にロンドンの​​ストーク・マンデビル病院内に創設された脊髄損傷科の初代科長のルードウィッヒ・グッドマン卿の功績が大きいと言えるでしょう。

グッドマン卿は治療に車いすで行うバスケットボールや卓球などのスポーツを取り入れました。また、1948年にはロンドンオリンピック開催に合わせて、ストーク・マンデビル病院内で16名によるアーチェリー大会を開催しました。これがパラリンピックの原点となる大会となりました。

パラリンピックの原点である大会が開催されてから70年余りが経ち、今年開催された東京2020パラリンピック競技大会では、22競技539種目が実施され、過去最多の約4400名の選手が参加しました。このように、パラリンピックは現在のような世界的なビッグイベントとして注目されるようになりました。

このように多くの人々に理解を得るようになってきたのにはパラスポーツに関わってきた先人たちと選手たち自身の努力の賜であることは言うまでもありません。

こうした歴史を経て、健常者が一緒にできるスポーツが増えるなど、パラスポーツは現在も発展を続けています。

パラスポーツの種類

パラスポーツと一言に言っても多くの種類があります。ここでは、全国障害者スポーツ大会で実施されている競技の一例をご紹介したいと思います。

車いすバスケットボール

競技用車いすに乗って行うバスケットボール。大会によっては健常者の出場も可能。

陸上競技

障がいの程度によってクラス分けがなされ、身体・知的・精神障がいをお持ちの方など 幅広い方が実施している。競走種目、跳躍種目、投てき種目がある。

フライングディスク

障がいの程度によってクラス分けがなされ、身体・知的・精神障がいをお持ちの方など 幅広い方が実施している。投球の正確さを競うアキュラシーと、投げた距離を競うディ スタンスの2種目がある。

ボッチャ

ジャックボールと呼 ばれる白い目標球に、赤・青のボールをいかに近づけるかを競う
スポーツ。障がい者や健常者関係なく誰でも参加しやすい。

このように、同じスポーツでも、ルールの工夫次第で、誰でもできる可能性の幅は無限大に広がるのが、パラスポーツです。

パラスポーツをSDGsの視点で考える

持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17の目標と169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。

このSDGsをパラスポーツの視点で考えてみるとパラスポーツの普及や発展がSDGsの目標の達成にも貢献することがわかります。

例えば、下記の3つの目標はパラスポーツを通して障がいを持つ人への理解に繋がり、目標達成への一助となる得ます。

  • 目標3:すべての人に健康と福祉を
  • 目標10:人や国の不平等をなくそう
  • 目標16:平和と公正をすべての人に

SDGs達成に貢献するスポーツSDGs

スポーツ界全体としてもSDGs達成に貢献するムーブメントが起こっています。スポーツ庁は、スポーツの持つ、人々を集め、巻き込む力を使って、SDGsの認知度向上や社会におけるスポーツの価値向上に取り組み、SDGsの達成に貢献する「スポーツSDGs」を提言しました。これにより、スポーツの力はスポーツのためだけでなく、社会のために使うべきであることが明示化されました。

以下はスポーツ庁HPでSNS等での発信を促しております。

「スポーツSDGs」の趣旨に御賛同いただける企業やスポーツ団体等とも連携し、より大きなムーブメントにしていきたいと思っております。スポーツの力を活用したSDGsの達成に取り組んでいただき、共通のハッシュタグ「#SportsSDGs」を付けて、「スポーツSDGs宣言」として、その内容をぜひSNS等で発信してください。

SDGs目標3の達成に向けて

今回は「SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を」の達成に向けてパラスポーツとして貢献できることを考えてみます。

この目標は、あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進することを目標としています。すべての人々の健康的な生活を確保することという点にパラスポーツが貢献できることとして私が考えるのは、パラスポーツを多くの人に知ってもらい、実際に始められる機会や環境を増やすことだと思います。

上記の「パラスポーツの種類」でも紹介させていただいたようにパラスポーツはルールの工夫によって誰もができるスポーツになり得るものです。障がいの有無に関わらず、スポーツをすることは身体の機能を維持することやスポーツを通した人との繋がりによって、心の健康にも繋がると考えています。

パラスポーツを通してより良い社会実現へ

自分とは違う誰かを理解し、認め合うことで価値観を広げ、お互いに相手の立場を考え、優しさを持ったより良い社会にしていくことができるのではないでしょうか。

言葉にすることは簡単ですが、人との繋がりが希薄になりつつある現代社会では、他者を理解し、認め合うことは意外と難しいことであると感じています。しかし、きっかけさえあれば、自分自身や社会は変えることができるはずです。パラスポーツをきっかけにSDGsについて考え、より良い社会をつくることに目を向けていただける方が一人でも増えたら嬉しいです。