2021.08.15
SDGsで掲げられたゴール達成のため、衣食住に関わる多くの企業・組織が高い目標を掲げ、地道な取り組みをおこなっています。
なかでもコットン産業は、SDGsで掲げられている17のゴールすべてに関わる問題を抱え、その解決に向けた取り組みが注目されています。
そこで、解決の糸口となるオーガニックコットンとは何か、オーガニックコットンを通じた取り組みについて見ていきましょう。
コットン(綿)は、肌触りがよく手入れも簡単で人気の素材です。特に、汗をかく夏場には、手軽に洗濯ができるコットンの衣類が欠かせませんよね。
しかし、コットンが作られる過程が、環境や人に悪影響をもたらすことがあります。環境に対する影響、そして人に対する影響について、それぞれ解説します。
コットンの原料である綿花の栽培が、環境に与える代表的な問題として、以下が挙げられます。
・地下水の汚染
・土壌の土質の変化
・大量の水資源の使用
綿花の栽培には、防カビや害虫駆除のため、多量の化学肥料や農薬が使われています。
具体的な使用量として、『1990年代には、綿花栽培の化学薬品使用はピークとなった』『年間の綿花生産の殺虫剤使用は、世界中の殺虫剤使用量の20数%となった。』と言われています。
多量の化学肥料や農薬が土壌に残留すると、土に浸透して、地下水の汚染を引き起こします。また、土壌に必要なはずの微生物を排除し、農作物が育たない土質に変化させてしまいます。
さらに、綿花の栽培では、ほかの農作物と比較して多くの水を消費します。しかし、綿花の栽培をおこなう多くの地域は、インドや中央アジアといった、水資源に乏しい地域です。
貴重な水資源を綿花栽培に多量に使うことで、人々に飲料水が行き届かないだけでなく、川や湖の水面が下がり、結果として川や湖などの枯渇が問題となります。
こうした土壌汚染や水質汚染の問題は、SDGsで掲げられている17のゴールのうち、「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」に、特に関連します。
コットンが人に与える問題として、劣悪な労働環境が挙げられます。
綿花栽培に多量の化学肥料や農薬が使われることで、携わる人々はそれら体内に吸い込んでしまいます。肥料や農薬を吸い込むことは、健康被害や不妊の原因となります。
また、綿花の栽培地域では児童の強制労働も問題になっていて、収穫が忙しい時期には学校に行かせてもらえず、収穫をさせられるといった問題も起きています。
しかし、綿花を栽培する地域は貧困に悩む地域が多く、身体的な負荷や強制労働が問題と認識しながらも、収入を得るために仕方なく携わっている人も多くいます。
正当な賃金が払われていない場合もあり、SDGsで掲げられている「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」に関連していて、解決に向けてさまざまな取り組みが行なわれています。
サステナブルコットンとは、綿花の栽培過程の問題に配慮し、環境や人への影響を最小限に抑えた栽培方法で作られたコットンを指します。
これまでのコットン生産で発生していた問題への対策として、近年、サステナブルコットンの生産が注目されています。
サステナブルコットンが普及すると、環境や人に対する負荷を低減し、安全かつ長期的な生産が持続可能となります。
具体的には、土壌の土質改善、水資源や化学肥料・農薬の使用量削減、農家の安定的な収入の確保など、環境や人に対する問題解決やSDGsのゴール達成に向けて、期待が高まっています。
オーガニックコットンは、サステナブルコットンのひとつです。
認証機関が認証した農地で、3年以上化学肥料や農薬を使わずに栽培された、綿花を指します。
栽培に使用する肥料や農薬だけでなく、栽培に関わる人の環境や安全にも厳しい基準が設けられていて、その基準をクリアしなければ、オーガニックコットンであるとうたえません。
基準をクリアしたオーガニックコットンは第三者機関が認証し、認証ラベルをつけられます。市場において、オーガニックコットン製品への積極的な置き換えが必要であると同時に、そうした取り組みの認知度を向上することが大切です。
それによって取り組みへの認知度があがり、賛同者が増えれば、消費者がコットン製品を購入するときに、すすんでオーガニックコットンの製品を選ぶことになります。
この消費者の選択により、市場の製品がこれまでのコットンからオーガニックコットンに置き換わることが加速されます。
現在では、オーガニックコットンを扱うアパレル企業も増えています。
たとえば、アウトドアウェアを中心に取り扱う「パタゴニア」では、1996年からコットン製品には、100%オーガニックコットンのみを使用しています。
また、イギリスの人気ブランド「ヴィヴィアンウエストウッド」では、オーガニックコットンを使ったTシャツだけでなく、デニムの販売もされています。
そのほか、世界的に知名度の高いブランドだけでなく、株式会社KURKKU(クルック)は、「サステイナブル・ファッション・サークル」を発足。
このサークルは、アパレルの小売店とファッションデザイナー・クリエイターが「サスティナブルはファッショナブルである」という価値観を広めることを目的として立ち上げられました。
2020年には活動の一環として、インド農家の支援となるプレオーガニックコットンでTシャツ製作し、伊勢丹新宿店や渋谷PARCOなどで販売。
コットン生産における問題解決に向けて、各企業がこうした取り組みを通じて社会貢献をおこなっています。
私たち消費者がコットン製品を選ぶとき、オーガニックコットンの製品を選択を通じて、自然環境や人の労働環境に配慮する活動の支援ができます。
購買行動は、企業や活動への投票行動でもあります。ひとりひとりが持つ貴重な投票権を、自然環境や、人々の安全な暮らしに使いましょう。
その票が多く集まるほど、コットン栽培に関わる人に正当な賃金が支払われ、化学肥料が使われずに健康被害が抑えられます。
また、土壌汚染がなくなることで地下水の汚染がなくなり、安全な水質を確保できるなど、メリットが多くあり、SDGsのゴールの達成にもつながります。
それらのメリットは、コットン栽培をしている地域に限らず、私たちが住んでいる環境や、将来の地球環境にもよい影響をもたらします。
また、商品を選ぶためには、目の前の製品がどんな素材で、どのように作られているのかを知ることも必要です。
インターネットが普及している今だからこそ、簡単に多くの情報を得ることができます。それだけでなく、遠くの店舗から商品を購入することもできる時代です。
モノが溢れる時代、必要なものを買うときはしっかりと情報を得て選び抜きたいですね。
SDGsは私たちにとって、少し遠い存在のように感じるかもしれません。しかし、私たちひとりひとりの選択や行動が、SDGsのゴールの達成に結びつきます。
Tシャツ1枚を選ぶときでさえ、オーガニックコットンのTシャツを選ぶことでSDGsへの貢献になります。
日々の生活の中でできることから少しずつ、変化を楽しみながら環境によい選択をしていきましょう。
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