2021.09.20
SDGsの浸透によって聞くことの増えた「エシカル」という言葉。倫理的、道徳的といった意味を持ち、自然環境や生産者に配慮した製品を表す際に使われます。
コーヒーやチョコレートに多く用いられる言葉ですが、最近ではジュエリーにも用いられる言葉となり、環境に優しいエシカルジュエリーが注目を集めています。
そこで今回は、エシカルジュエリーについて解説し、特に注目すべきブランドを合わせて紹介します。
エシカルジュエリーとは、鉱石の採掘からデザイン・制作まで、携わる人や環境に配慮された宝石のことです。
実はこれまで販売されていたジュエリーの生産過程では、児童への強制労働や環境汚染といった問題が起こっていました。
そうした問題を解決または改善するための取り組みが行われているジュエリーが「エシカルジュエリー」と呼ばれています。
さらにこれまで誰かが身に着けていたジュエリーを、デザインを変えて受け継ぐ「リユースジュエリー」も、エシカルジュエリーと呼ばれます。
従来のジュエリーには、具体的にどのような問題があったのでしょうか?美しいジュエリーの裏側に潜んでいた、3つの課題について解説します。
ダイヤモンドをはじめとする鉱石は、紛争当事者の資金源となることがあります。その多くは内戦地域から産出されたダイヤモンドであり、「紛争ダイヤ」「ブラッドダイヤ」と呼ばれます。(抜粋:wikipedia)
紛争ダイヤは、
・鉱山への武力による不法占拠
・地域住民への過酷な強制労働
・法外な価格での取引
といった問題を含んでいるうえ、その収益は兵器の購入に使われたり違法取引を引き起こす要因となっているのです。
鉱石発掘における児童労働や強制労働、不当労働も大きな問題です。
鉱石発掘のためにダイナマイトが使われる危険な場所で、児童が学校に行くことを許されず強制的に労働させられることはあってはならないこと。また、1日働いてもわずかな収入しか支払われない不当労働も行われていました。
こうした背景には、貧困で学校に行けないあるいは就職先がないことから、生活のためにやむを得ず働かざるを得ない人々の事情もあったのです。
鉱石発掘は、環境破壊にも繋がっています。特にダイナマイトの使用で森林が破壊され、河川の水質も汚染されました。
上下水道の整備が完全でない内戦地域に暮らす人々にとって、河川は生活用水の役目も果たすため河川が汚れることは死活問題であると言えます。
ダイヤモンド業界はジュエリー生産における問題を重く受け止め、不当取引の排除を決定しました。国連や各国政府などの協力も得て、2003年に「キンバリー・プロセス制度」を確立。
この制度に加盟した国には、ダイヤモンドの原石を輸出する際に次のような取り組みを義務付けています。
・不正に開封できない容器を使用すること
・紛争と関係のない地域から採掘されたことを証明する「原産地証明書(キンバリープロセス証明書)」を添付すること
・加盟国を除く国への輸出の禁止
しかし、義務化されたルールを破った場合の罰則がない、環境破壊への言及はないことなどから、大手ジュエラーでも、透明性・環境に配慮した独自の取り組みがなされています。
2021年4月、ラグジュアリーブランド「ルイヴィトン」の母体企業である「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)」は、プラダグループ、「カルティエ」の母体となるリシュモンと協力し、「オーラブロックチェーンコンソーシアム(Aura Blockchain 共同体)」を創設を発表しました。
この共同体が提供する技術と情報によって、消費者は商品が辿った履歴と信頼をおける商品であるかを知ることが出来るようになります。
イタリアのラグジュアリーブランドである「ブルガリ」は、Responsible Jewellery Council(=責任ある宝飾のための協議会)(以下、RJC)のメンバーとして認定されています。
RJCは金及びダイヤモンドを取り扱う宝飾業界を対象とした、社会・環境責任の範囲をカバーする規範と規格を開発する国際的な非営利組織です。(参考:RJCホームページ)
この認定により、採掘から小売りまでが自社の責任において管理されていると示せます。またダイヤモンドのサプライヤーに対し、2003年1月1日以降に加工されたすべてのダイヤモンドがコンフリクトダイヤモンドでない保証書の添付を義務付けています。
2009年からは「セーブ・ザ・チルドレン」とのパートナーシップを通じて子どもたちへの支援活動を行ったり、2020年4~5月にはコロナ禍における医療従事者を応援する“ブルガリ お弁当プロジェクト”を行うなど積極的にチャリティ活動を実施しています。
アメリカのジュエリーブランド「ティファニー」は、「サステナビリティこそがビジネスを前進させ、私たちがすること全ての基盤である」と考え、商品・人・地球に対する行動指針を掲げています。
なかでもダイヤモンドのトレーサビリティに関する取り組みは、15年以上にわたって行われてきました。具体的には、0.18カラット以上のダイヤモンドはすべて消費者に原産地を開示しています。また、加工やグレード鑑定など全ての工程の説明がなされ、透明性における先進的な活動が行われています。
またダイヤモンドに限らず、カラージェムストーンにおいても透明性や人権に関する懸念がある国では調達しないことを決定するなど、徹底しています。
さらに、環境に配慮した取り組みとして、2015年に「2020年末までに主要な木材や紙のサプライチェーンから森林伐採を排除する」ことを掲げました。
その結果として、2020年にはカタログおよびマーケティング資料の100%、箱や紙バッグの100%を持続可能な供給源から調達。さらに箱や紙バッグの50%以上がリサイクル成分で作られ、段ボール紙は100%リサイクル成分で作られるなど着実な成果に繋がっています。
エシカルジュエリーへの注目が集まる中、最近ではハイブランドだけでなくエシカルジュエリーブランドへの注目度も高まっています。
ここでは、2000年以降に設立された国内エシカルジュエリーブランドを紹介します。
2015年10月にスタートしたブランドです。2006年にスタートした、レザーや麻を使ったバッグを中心に扱うブランド「MOTHER HOUSE(マザー ハウス)」の姉妹ブランドです。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」をミッションに掲げ、採掘や加工に関わる国や職人の個性が輝くモノづくりを目指しています。
細さ1mm以下の金線から作られる繊細な金細工や、石の個性を生かしてデザインを最小限に抑えたジュエリーが特徴です。
2009年に誕生したブランド「HASUNA」では、産地や採掘の工程が明確にわかるダイヤモンドが使用されています。
また、ゴールドはフェアマインド認証ゴールドやリサイクルゴールドを使用しています。フェアマインドとは、鉱山で働く人の人権を守るための基準をクリアしたゴールドを意味します。
ファッショナブルで個性的なデザインが特徴で、売り上げの一部は寄付を行うなど積極的に社会活動が実施されています。
〝ジュエリーで世界を幸せにする〟をコンセプトに掲げ、2011年にスタートしたブランドです。途上国の小規模コミュニティーと協力し、フェアトレード素材の調達や技術継承のための支援を行っています。
フェアマインドゴールド、リサイクルゴールドなどを使用している他、天然石の透明感を生かしたデザインが特徴です。
商品購入者の声を生産者に届け、ジュエリーに携わる人の幸せの循環を目指しています。
これまでジュエリーは、富の象徴であり、自分自身を煌びやかに着飾るためのアイテムでした。しかし、サスティナブル・エシカルの考え方が浸透しつつある今、ジュエリーに対する私たちの考え方が問われているように感じます。
例えば、婚約指輪のダイヤモンドと言えば「4C(ヨンシー)」と呼ばれるCarat(カラット=重さ)・Cut(カット=輝き)・Color(カラー=色)・Clarity(クラリティ=透明度)が重視されてきました。
しかしこれからは、エシカルダイヤモンドやリユースダイヤモンドであることが重視されるかもしれません。また、日本でもヨーロッパのようにアンティーク、ヴィンテージが価値のあるものとなるかもしれません。
見た目だけの美しさではなく、ジュエリーが持つストーリーや歴史を自信に繋げて本当の美しさをまといたいものです。
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