「富栄養化」とは何か?いま、水質環境で起きていること|circu.(サーキュ)

2021.05.10

「富栄養化」とは何か?いま、水質環境で起きていること

「富栄養化」という言葉を聞いたことはありますか?

「富栄養化」は、近年、川や海において問題になっている現象です。この現象が生態系のバランスを崩す原因となり、私たちの生活に影響を及ぼすと言われています。

そこで本記事では「富栄養化」について解説するほか、現在おこなわれている公的な対策を紹介します。まずは今起きていることやその原因を知り、個人でできる対策を考えていきましょう。

富栄養化とはなにか?その原因は?

富栄養化とは、川の水や海水に含まれる栄養分が、自然の状態より増えすぎてしまうことを指します。

その現象の原因となるのが、日ごろ私たちが使う洗剤や農薬、肥料などに含まれる窒素やリンです。窒素やリンは、水中の植物やプランクトンの栄養になります。

そのため、洗剤や農薬などを含む水が川や海に流れ込み、富栄養化の原因となります。

富栄養化による悪影響とは?

「川の水や海水の栄養分が増える」と聞くと、良いことのように感じてしまいます。しかし、富栄養化は近年、環境問題のひとつとしてとりあげられており、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」でも、「富栄養化」に関する内容が含まれています。

では、富栄養化によって環境に対して、どのような悪影響があるのでしょうか?

洗剤や農薬の流出で水中の窒素やリンが増えることで富栄養化が起こり、水中の植物やプランクトンが増殖し、赤潮・アオコの原因となります。

アオコとは、富栄養化が進んだ湖沼等において微細藻類(主に浮遊性藍藻)が大発生し水面を覆い尽くすほどになった状態、およびその藻類のことです。

引用:wikipedia「アオコ」

その結果、水中の酸素が不足して魚や貝が死滅してしまい、生態系のバランスが崩れ、水質環境にも悪影響をもたらします。

また、魚や貝が死滅することで漁獲量が減少し、私たちが日々食べられる魚や貝の量が減ったり、価格が高騰したりします。

さらに、川や海の水が水道水など生活用水として利用されている場合は、水質悪化により、利用できる水質レベルまで浄化するための工程や時間が増えて大変になるだけでなく、異臭味といった問題の原因となります。

富栄養化への対策

富栄養化が問題視されている中、現在、どのような対策が行なわれているのでしょうか。まずは、公的に行なわれている取り組みを見ていきましょう。

そして、私たちが日々の生活でできる具体的な取り組みについて考えていきましょう。

現在おこなわれていること

富栄養化の対策として、もっとも大切なことは2つです。まず1つは、汚れてしまった水質の改善。そして2つめは、水質汚染をしないことです。

公的に行われている対策として、水質改善については、日々の技術進歩により、窒素やリンを除去する方法が開発されています。しかし、まだ100%を除去するには至っておらず、そもそも水質汚染を避けることが根本的な解決となります。

水質汚染をしないための対策として、工場から川、海、湖などへの排水に関して、全国で排水基準が決められています。それだけでなく、都道府県ごとに、その地域の状況を踏まえてより厳しい排水基準が設けられています。

そのため、河川への排水を伴う事業を行なっている企業では、企業ごとに対策が行なわれており、ある飲料メーカーの排水処理施設では、定められた排水基準値を下回るよう処理をしてから、河川や下水道に排水されています。

また、自治体により「富栄養化防止条例」や「富栄養化防止基本計画」を策定し、窒素・リンの削減目標を設定されている場合もあり、各所で対策が進められています。

そのほか、水中の植物やプランクトンが増えないよう、農業・漁業に影響が出ない程度の薬剤散布をしたり、植物の光合成を強制的に遮断するよう水面への日光を遮る対策も行なわれています。

私たちができること

富栄養化の原因は、洗剤や農薬などが原因であることはお伝えしました。しかし、実はその内訳は、生活用水が60%、工業排水が20%、農業排水が20%と言われています。

参照:平成11年度 環境省「第6次水質総量規制の在り方について (答申)」

つまり、私たちの心がけによって、最大で60%の水質汚染を防ぐことができるのです。もちろん、水質汚染を完全になくすことは現状不可能です。

しかし、生活の中でどのようなことを心がければ、水質汚染を減らせるのでしょうか。それは例えば、水質汚染を避けて油を水に流さないよう、食器についた油汚れはふき取ってから食器を洗うといった小さなことを積み上げることが大切です。

ほかには、食器を洗う際に洗剤を多く使わないよう、水で薄めた洗剤をボウルに少量入れて少しずつ使う。家庭や外食で出たスープやみそ汁、飲み物を残さない。米のとぎ汁は流さずに家庭の植物にあげるなどが考えられます。

それぞれ取り組みとしては小さく感じますが、各個人が毎日少しずつ行なうことで、結果として大きな取り組みとなります。

毎日の行動が 私たちに還ってくることを知ろう

水質汚染の60%を占める、私たちの生活排水。環境問題が深刻化している今こそ、ひとりひとりの取り組みで、この数字を急速に減らさなければなりません。

生活排水が過半数を占めていることに、私は「もう他人事ではない」という強い衝撃を受けました。また同時に、「努力すれば、それだけ大きな良いインパクトになり得る」ということも感じています。

このまま水質汚染が続けば、近い将来、水道の水が飲めなくなったり、魚介類を食べられなくなります。そうして私たちの毎日の行動が、将来、巡り巡って自分や自分の大切な人に還ってくるという認識を持ち、一日も早くどんな小さなことでも行動変容することが必要です。

環境への取り組みは遠いどこかの話ではなく、とても身近な話であるということを忘れないように意識することが大事です。

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