2022.03.12
私たちの食生活に欠かせない、牛乳。飲み物としてだけでなくパンやヨーグルトの材料としても使われ、口にする機会が多いものです。
しかし私たちが牛乳を飲むことで牛に大きな負担を強いているだけでなく、環境にも悪影響を及ぼしています。そこで、ミルクの新しい選択肢として生まれたのが、サスティナブルミルクです。
この記事では、サスティナブルミルクに興味のある人や既に取り入れている人に向けて、そのメリットや種類について解説します。
サスティナブルミルクとは、豆乳やオーツミルクのような植物性のミルクを指します。乳牛から搾取した動物由来の牛乳とは、由来成分が大きく異なります。
プラントベースミルク、ヴィーガンミルクとも呼ばれ、昨今では、動物愛護やサスティナブルの観点で新しいミルクの選択肢として店頭に置かれるようになっています。
牛乳にアレルギーを持つ人や乳糖不耐症の人にとっては、特に貴重な選択肢です。その他、栄養価や成分、味についても違いがあるので求める栄養や味の好みで飲み分けるのがおすすめです。
牛乳の製造は、環境問題の原因となります。グラス一杯(200ml)の牛乳を作ると、他のミルクを作った場合と比較して多くの温室効果ガスを排出し、土地や水の使用量も多いという調査結果があります。
広大な土地は乳牛の放牧、多量の水は乳牛の飼料となる穀物を育てるために必要です。土地を切り拓くために行う森林伐採が森林の減少や土壌劣化を起こし、乳牛を育てることが温室効果ガスの排出や水質汚染の原因となるのです。
牛乳の製造は環境負荷が高い一方で、サスティナブルミルクは環境負荷が低くメリットがあると言われています。具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
上図はBBC(英国放送協会)が報道したオックスフォード大学の調査結果です。グラス1杯(200ml)のアーモンドミルクを作った場合に排出される温室効果ガスの量は、牛乳と比較すると3分の1以下であると言われています。
近年、多くの調査結果から牛がメタンガスを発すると報告されていますが、サスティナブルミルクは牛を育てることも、他の動物を育てることもないため、温室効果ガスの排出量を少なく抑えられます。
サスティナブルミルクの場合、原料となる植物を育てることで、植物によって二酸化炭素が吸収されて環境にとってはむしろメリットがあると言えます。
出典:BBC/Climate change: Which vegan milk is best?
グラフを見ると、サスティナブルミルクを作る場合の水の使用量が少ないことがわかります。アーモンドミルクは他のサスティナブルミルクと比較すると水の使用量は多いものの、牛乳の半分ほどであることがわかります。
世界が水不足に悩んでいる近年、大量の水を使って作られる牛乳よりも、サスティナブルミルクの方が環境に対する負荷が小さいと言えるでしょう。
グラス1杯の牛乳を作る場合、650㎡(テニスコート2面分)の土地が必要となる一方、オーツ麦由来のオートミルクを作る場合は、土地の使用量を10分の1に抑えられます。
牛乳を作る場合、家畜の生育による土壌汚染が問題となります。しかし、サスティナブルミルクの場合は家畜を育てることはありません。
さらに、土地の使用量が抑えられることで森林伐採を減らし、森林による雨水のろ過機能が働くため、土壌汚染だけでなく水質汚染も防ぐことに繋がります。
サスティナブルミルクは、乳牛にとってもメリットがあります。これまで多くの牛乳を搾取するために、乳牛は人工妊娠や出産、毎日の搾乳、そして仔牛や余剰となった雄牛の処分といった過酷な環境に置かれていました。
サスティナブルミルクの需要が増えることで、必要以上に乳牛が妊娠や出産などを迫られることがなくなり、動物愛護の観点で大きなメリットが期待できます。
ここからは、植物性成分で作られたおすすめのサスティナブルミルクについて、原料や栄養に関する情報を含めて紹介します。
大豆から作られたミルクで、日本では牛乳の次に定着しているミルクです。ヴィーガン食やアレルギー食では牛乳の代わりとして用いられていましたが、カフェ文化の浸透とともに、認知度がより向上しました。
カルシウムは牛乳より低い一方、ビタミンEは牛乳よりも多く含みます。イソフラボンを多く含み、美容効果が期待出来るため女性には特に人気があります。
他のミルクと比較してカロリーが低く、ビタミンEの含有量も多いアーモンドミルク。1杯ので、1日のビタミンE推奨摂取量の110%を摂取出来ると言われています。
木に実ることから、土地の使用量を抑えられて温室効果ガスの排出量も少なく自然に優しいメリットがあります。
栽培には大量の水が必要となることから、環境配慮のためにサスティナブルミルクを選ぶ場合は、他のミルクと併用して飲む選択肢を持つ必要があります。
オーツ麦から作られているオートミルクは、食物繊維やビタミンを多く含み栄養価が高い飲み物です。クセがなくあっさりした味で飲みやすく、コーヒーとの味の相性も良い点が特徴です。
豆乳やアーモンドミルクと比較すると知名度は下がるものの、最近ではコンビニエンスストアでも見られるようになり手軽に購入出来ます。
ココナッツの実から抽出されるミルクで、甘くコクのある味が特徴です。タイやフィリピンでは料理に使われますが、日本ではお菓子作りに多く使われます。
カリウムやマグネシウムを多く含み、美容効果が期待出来ます。甘みを足せば1杯飲むだけで高い満足感を得られるのも、ココナッツミルクの嬉しいポイントです。
ライスミルクの原料は、米と水です。そのため、牛乳や小麦、大豆にアレルギーを持つ人でも飲めるミルクとして用いられます。お米の甘みを感じられるものもあり、他と比べて優しい味わいです。
炭水化物が主成分で、低脂肪である点は牛乳との大きな違いです。コレステロールを含まないので、コレステロールの摂取を制限されている人でも飲めるミルクです。
この記事では、サスティナブルミルクのメリットや種類について解説しました。ミルクだけでもこれほど選択肢が増えたことで、味の違いも楽しめるようになりました。
環境に対する視点から、具体的にどのミルクを選ぶべきかについては注目する項目によって答えが変わります。
植物由来のミルクであっても農薬を使って育てた植物で作られたミルクであれば、土壌汚染、水質汚染に繋がるほか、人体にも影響を及ぼし必ずしも環境や健康に良いと言えず、オーガニックの原料であるかどうか着目することが大切です。
また、海外産の原料で作られている場合は輸送によって排出されるCO2も気にする必要があります。つまり、自分が口にしようとしているものの原料や製造工程に関する正しい情報を得る必要があります。
買い物は、製品を作る企業への支持の意思表示となることから、正しい情報を得て自分が食べるものや飲むものにも責任を持てるようになりたいものです。
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