2022.12.03
環境意識の高まりとともに、食品ロス、ロスフラワーなど、まだ食べられるものや活用できるものの廃棄が問題となっています。同様に、まだ使える化粧品の廃棄も問題視されています。廃棄される化粧品はコスメロスと呼ばれ、近年、その削減に向けて対策を講じる企業や団体が増えています。
今回は、コスメロス発生の原因とともに、企業・団体が行う対策についても紹介します。
コスメロスとは、まだ使えるにもかかわらず様々な理由で廃棄される化粧品を指します。コスメロスには、大きく2つの問題があります。1つ目は、まだ使えるものが捨てられる倫理的問題であり、2つ目は、廃棄による環境への悪影響です。
口紅やアイシャドウなど多くの化粧品は、成分に微細なプラスチックを含んでいます。近年認知されてきている「マイクロプラスチック」です。さらに、パッケージにもプラスチックが使われているため、廃棄と同時にプラスチックごみを排出していることになります。
廃棄の際にエネルギーを必要とするだけでなく、プラスチックを焼却することで温室効果ガスが発生し、環境に悪影響を及ぼします。
コスメロスは、製造、販売、そして消費者が化粧品を使うまでの過程で発生します。それぞれの過程でどのような理由でロスが発生するのか解説します。
製造段階では、販売基準を満たさない商品の発生によりコスメロスが生まれます。例えば口紅の場合、発色や塗り心地には問題がないものの、形状に「欠け」が発生してしまい、そのために販売出来なくなることがあります。
この他、安く安定した供給が出来るよう大量生産していることも、コスメロスを生む原因となっています。
販売段階では、過剰発注や売れ残りがコスメロスの主な発生原因です。化粧品は洋服同様に流行のサイクルが早く、流行を過ぎたものは売れ残り、廃棄されます。またパッケージ変更が発生した場合、旧パッケージの商品はメーカーへ返品することとなります。
さらに、クリスマスコフレをはじめとするイベント関連商品、花粉症対策を目的とする季節商品なども、イベントや季節が終わると返品しなければなりません。メーカーへ返品された化粧品の多くは、そのまま廃棄されます。
近年では、新型コロナウイルスの感染拡大によってマスクの着用が常態化しています。その影響で口紅の売り上げが下がっていて、コスメロスの発生原因となっています。
消費者の手に届いてからは、流行が終わった、あるいは使用期限を過ぎたことが主な廃棄原因となります。使用期限の目安は未開封の状態で約3年、開封後は商品にもよりますが、3ヶ月~1年とされています。しかし、この期間内に使い切ることが出来ずに廃棄されるケースが多いです。
この他、髪の色や服装と合わなくなったなど、嗜好の変化によって廃棄されることもあるでしょう。
コスメロスに対して取り組みを行う企業や団体が増えています。取り組みの内容は、大きく2つに分けられます。1つは、廃棄した後の環境負荷を抑えるための取り組みです。例として、プラスチックを使わない製品の開発が挙げられます。
そしてもう1つは、コスメロスそのものを減らすための取り組みです。以下に、企業や団体が行う、コスメロス削減のための取り組みを紹介します。
ロート製薬では、自社のオンラインショッピングサイトでアウトレット商品を販売しています。また、アスクル株式会社が運営するECサイト「LOHACO(ロハコ )」にもアウトレット商品を掲載し、販売しています。
掲載している商品は、パッケージ変更で販売出来なくなった旧商品や季節限定商品などです。そのため、使用上の問題はありません。こうした商品を通常より安く販売したり、購入ごとにポイントを付与したりすることで消費促進を図り、廃棄数を減らしています。
また、2021年からは一般社団法人バンクフォースマイルズ(所在地:東京都港区、代表理事:山田メユミ)が実施する「コスメバンク プロジェクト」に、高品質でありながら処分される可能性のあったスキンケア・化粧品を寄贈しています。
このプロジェクトでは、コスメロスとなる商品をメーカーから受け取り、経済的困難を感じているひとり親世帯に贈っています。こうした活動はコスメロスを減らし、同時に貧困に悩む人々の美しくありたい気持ちや健康を守ることにも貢献しています。
コーセーは、2020年から株式会社モーンガータが展開する化粧品のアップサイクル事業に協力しています。アップサイクルとは、本来捨てられるはずの化粧品にデザインやアイデアなどの付加価値をつけ、アップグレードした形で再生させることです。
モーンガータでは、コスメロスとなるアイシャドウや口紅などのカラーアイテムを、絵の具にアップサイクルして販売しています。コーセーでは、化粧品を原料とした絵の具の販売や、絵の具を使ったワークショップを開催することでこの事業を支援しています。
株式会社松屋の銀座本店、通称「松屋銀座」では、2022年5月~6月にコスメ回収イベントを行いました。個人が持っている不要になった化粧品を回収し、イベント後に「COSME no IPPO(コスメ ノ イッポ)」プロジェクトを通じてクレヨンへとアップサイクルします。
化粧品のメーカー、ブランドに関係なく回収されるため、消費者にとって気軽に参加しやすい活動だと言えます。
Beaufa(ビューファ)(所在地:東京都品川区、代表理事:殿木修司)では、2021年12月から「化粧品ロス×コスドネ® Eco プロジェクト」を行っています。このプロジェクトは、ロスとなる化粧品を本当に必要とする人に提供するコスメティックドネーションの構築を目指しています。
このプロジェクトの達成に向けて、美容・化粧品関連企業と共に、貧困や災害等により化粧品を必要としつつも使えない人に化粧品を提供する仕組み作りを行っています。余剰となっている化粧品を、本当に必要な人に供給することで、サステイナブルな社会へと貢献しています。
コスメロス発生の原因の一端は、私たち消費者の購買行動にあります。消費者が安さを追い、流行を追い求めた結果、大量生産・大量供給が行われ、その影響で多くのコスメロスが発生しているのです。
そこで私たちが今後出来ることは、食べ物と同じように、必要な分だけを購入することです。安くなっているからと余分に買ったり、流行を追い求め過ぎないことが大切です。
ただし化粧品は、自分自身を彩り、気分を上げるためのツールです。「気に入った1つのアイテムしか持たない」と厳しく決めてしまっては、日常がつまらないものになってしまいかねません。
そこで、必要数のみを買うことと、それに加えて環境に優しい成分のアイテムを選んだり、どうしても使いきれない場合は回収システムを利用したりすることで、ファッションを楽しみながら環境に配慮した行動が出来るのではないでしょうか。
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