もう間に合わない?世界で深刻化するゴミ問題の原因と対策|circu.(サーキュ)

2021.08.23

もう間に合わない?世界で深刻化するゴミ問題の原因と対策

イギリスの大手リスク分析会社Verisk Maplecroftが2019年に発表したデータによると、毎年21億トンもの廃棄物が発生しているとされています。その中でもアジアを中心にゴミに関する問題が深刻化しています。

大量に廃棄されるゴミは環境に悪影響をおよぼし、やがて私たちの生活に還ってきます。この悪い循環を止めるために私たちに何ができるのでしょうか。

この記事では世界で起きているゴミ問題と日本のゴミ問題、その原因と対策について解説します。この先も私たちが地球に住み続けられるよう、毎日の生活の中でできることを考えてみましょう。

世界で起きているゴミ問題の原因

人口の多い国(中国、インド、アメリカなど)は必然的にゴミの排出量も多くなりますが、近年はアジアを中心にゴミ問題が一層深刻化しています。その多くはプラスチックゴミに関する問題です。各国ではどんな問題が起きているのでしょうか。国ごとのゴミ問題の原因と対策を解説します。

中国の場合

平成30年に環境省が発表した「陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量(2010年推計)ランキング」により、もっとも多くプラスチックゴミを排出している国は中国であるとわかりました。

中国で多く排出されるプラスチックゴミの原因は、大きく2つあります。1つは1980年代から始まった海外からのゴミ輸入。そして2つ目は、急速な経済成長です。

中国はこれまで、日本やアメリカ、タイなどさまざまな国から廃棄物を輸入しています。その理由として、プラスチックの原料をそのまま購入するよりも、他国で廃棄されたプラスチックを輸入して、リサイクルする方が安価であることが挙げられます。

しかし、中国の経済成長に伴い、手軽で便利なプラスチックの利用が増え、比例してプラスチックゴミが増えました。

プラスチックごみの増大が中国の大気や水質、そして土壌汚染の原因であると考えられ、自国内のプラスチックごみのリサイクルを優先させるため、2018年から海外からのゴミ輸入を段階的に禁止し、2021年1月からは全面禁止へ移行しました。

タイの場合

中国でゴミ輸入が禁止されたことにより行き場を失った先進国のゴミは、アジアの他の国や東南アジアに輸出されることになりました。その行き先のひとつがタイです。

しかし、プラスチックごみを適切に高温処理できる焼却炉の数が不十分であったり、汚れたプラスチックは回収ができなかったりするため、大量に不法投棄されることもありゴミ問題へと発展しています。

現在はプラスチックを含むレジ袋の使用を禁止するなど、政府による対策がおこなわれています。

フィリピンの場合

フィリピンのゴミ問題と聞いて、「スモーキーマウンテン」を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか?

スモーキーマウンテンとは、フィリピンマニラ市北方に位置するスラム街のことです。大量の不法投棄物の山が自然発火し、煙がたち昇るさまから名付けられました。(wikipediaより)

この場所はすでに閉鎖されていますが、スモーキーマウンテンが象徴する通りゴミの不法投棄が問題となっています。中でもプラスチックは、タイ同様に適切に処理できる焼却炉が少なく、不法投棄されることが多くあります。

また、フィリピン国内ではゴミの分別が義務付けられているものの、ポイ捨てが非常に多く、河川にそのまま捨てられることも日常的にあります。

フィリピン政府はプラスチックを含むレジ袋の使用を禁止するなど、対策をおこなっています。また、不法投棄されたゴミを集めて販売した利益で、その日暮らしを余儀なくされている国民もいるため、個人向けにプラスチック回収量に応じて米と交換するといった対策も講じています。

カンボジアの場合

カンボジアも他国と同様に、急激な経済成長と人口増加によって、プラスチックを含めたゴミの廃棄量が急増しています。

しかし一方で、埋め立て処分場の残余数が少ないという問題を抱えています。

この背景には2つの問題があります。1つ目はカンボジアに暮らす人にとって、ゴミを分別する習慣がないこと。そのため、海外の清掃業者と提携し、街中の清掃がおこなわれたり、ゴミを捨てる際の分別指導がおこなわれたりしています。

そして2つ目は、大規模なごみ焼却場やリサイクル施設の整備が進んでいないことです。そのため、残り少ない埋め立て処分場の代替場所は未定ながら、中間処理場の建設が検討されたり日本からリサイクルの技術指導が行われ、対策が実施されています。

イタリアの場合

アジアに限らず、ヨーロッパでもゴミ問題は深刻化しています。中でもイタリアでは、処理量よりも廃棄量が大きく上回り、処理しきれないという問題を抱えています。

また、多くのゴミが分別されないまま、投棄されているという問題があります。そのほとんどは各家庭や個人による投棄で、多くのゴミが路上に放置されています。

そこでゴミを減らす対策として、生ごみ用の箱を各家庭に配布し、生ごみをたい肥にしてコンポスト化したり、地下鉄ではペットボトルのリサイクル機を試験的に設置し、リサイクルに入れたペットボトルの本数に応じて、切符に交換できる制度を運用したりとさまざまな対策がおこなわれています。

日本で起きているゴミ問題の原因

日本で起きているゴミ問題として、プラスチックの廃棄量の多さのほか、食品ロスの多さも深刻化しています。

プラスチックゴミや食品ロスが多い原因として、過剰な包装や便利で安価なものが手に入りやすい環境が挙げられます。

先進国として便利さを追求した結果、ファストファッションや100円ショップ、コンビニエンスストアなどの便利なお店が増えた一方で、使い捨てや過剰購入が定着してしまい、ゴミの増加につながったと言えます。

ゴミ問題が及ぼす 環境への影響

ゴミが増えることで環境にどんな悪影響があるかについては、2つに分けて解説します。

地球温暖化

ゴミを焼却炉で燃やすと、温室効果ガスの要素となる二酸化炭素が発生し、地球温暖化を進行させることとなります。

特に、プラスチックは適切な処理がされなかった場合、有毒ガスを発生させるため、高温処理が可能な焼却炉で適切な処理をおこなわなければなりません。また、取り扱いに注意するだけでなく、そもそもの燃焼量を減らす対策が必要です。

自然環境や生態系の破壊

地球温暖化の進行により、海面上昇や山火事が引き起こされます。地球温暖化による海面上昇によって、シロクマが絶滅の危機に瀕していたり、島国に住む人々は、住まいを失う危険にさらされたりしています。

また、山火事によって山に住む動物が住処を失うだけでなく、多くの樹木を消失し、二酸化炭素の排出量も増える一方です。

さらに、廃棄されて海に漂着した海洋プラスチックも、自然環境や生態系に悪影響を及ぼす原因になります。

それだけでなく、海洋プラスチックが小さくなった、マイクロプラスチックを体内に含んだ魚や貝を食べることで、私たち人間にも、健康被害が出ると言われています。

日本のゴミ問題への対策

日本が行っているゴミ問題への対策として、まず、法の整備があります。

具体的には

・循環型社会の形成を推進する「循環型社会形成推進基本法」
・廃棄物の排出抑制と処理の適正化をはかる「廃棄物処理法」
・循環型社会を形成していくために必要な3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みを総合的に推進する「資源有効活用促進法」

などを制定し、リサイクルやリユースをおこない、ゴミの廃棄量を減らす対策を実施しています。

そのほか、日本にとどまらず海外への支援として、日本政府が援助をおこない、日系企業がリサイクルビジネスへの参入を始めたり、自治体として北九州市がプノンペンと都市提携をおこない、ゴミ処理の技術支援を進めるといった対策がとられています。

ゴミ問題の始まりも終わりも 私たちの行動から

今回取り上げたゴミ問題の始まりは、ゴミを分別せずに捨てる、ポイ捨てするなど、私たちひとりひとりの行動が原因です。

そのため、私たち自身の行動で、ゴミ問題を解決に導くこともできるのではないでしょうか?具体的に大切なことは、まずはゴミを出さないこと。そして、どうしても出てしまうゴミは、きちんと分別して捨てることです。

新しい生活様式が定着しつつあるいま、デリバリーやテイクアウトの食事をする機会が増えています。同時に、容器やカトラリーなどのゴミも増える一方です。また、不織布の使い捨てマスクのゴミも増えており、自然に悪影響を及ぼしています。

そうした現状を改善するため、割りばしや使い捨てのカトラリーを断り、マイカトラリーを使う、布製のマスクを活用するなども個人でできる対策といえます。

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