フランスで犬猫の店頭販売が禁止に。ペットショップが生み出す問題とは|circu.(サーキュ)

2022.07.19

フランスで犬猫の店頭販売が禁止に。ペットショップが生み出す問題とは

2024年1月から、フランスで「動物愛護法」が施行されることとなりました。「動物愛護法」の施行により、ペットショップでの犬や猫の販売が禁止されます。背景には、フランスでの悲しいペット事情と、ペットショップが生み出す問題がありました。そこでこの記事では、フランスの「動物愛護法」や実際に起きている問題について解説します。これから私たちは動物とどのように向き合うべきなのか、考えていきましょう。

2024年からフランスで施行される「動物愛護法」とは?

2021年11月、フランスで「動物愛護に関する法案」が可決されました。2024年1月以降は、
ペットショップでの犬と猫の販売が禁止となります。

犬と猫を除く動物については、引き続きペットショップでの販売が可能です。しかし、衝動買い防止のため、通りに面した窓際にケージを置いたり、動物を見せるようなレイアウトをしたりすることは禁止されます。

また、ブリーダーからの購入や保護施設からの引き取りを希望する場合は、飼育に関する知識の有無などを証明する書類への署名が義務付けられます。さらに、引き渡しまでの7日間は「解約可能(クーリングオフ)期間」となります。

「動物愛護法」施行の背景

動物愛護法施行の背景には、フランスで毎年10万匹の犬や猫が捨てられる事実がありました。家族であったはずの犬や猫を捨てる理由として、主に以下の項目が挙げられます。

  • 旅行に行けなくなる
  • お金がかかる
  • アレルギーになった
  • なつかず、可愛くなくなった
  • 噛む、吠える、ひっかく

具体的な項目を見ると、一方的かつ勝手な理由で、毎年多くの犬や猫が無責任に捨てられています。
新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が長くなり、ペットを飼い始める人が増える一方で、外出規制が厳しくなり犬の散歩に行けない、ペットのための買い物に行けないなどを理由に安易に捨てる人もいると言われています。

日本のペット事情の現状

日本のペット事情の現状

毎年多くの犬や猫が捨てられている状況は、フランスに限らず日本でも起きていて他人事ではありません。環境省が発表している資料によると、日本でも毎年数万匹の犬や猫が保健所や保護施設に引き取られています。過去と比較すれば大幅に減ってはいるものの、いまだ7万匹以上の犬や猫が引き取られ殺処分までされているのです。

ペットショップが生み出す問題とは 犬猫販売が禁止される理由

犬や猫を販売するルートが他にあるにもかかわらず、何故「ペットショップ」での販売だけが禁止されたのでしょうか?ペットショップには、日本でも起きている4つの大きな問題がありました。

消費者の「衝動買い」を誘発する

ペットショップは生命を扱う仕事であるものの、分類上は小売店に分類されます。当然、NPOやボランティアではないため、利益追求が最大の目的となります。

早期に利益を出すためには、商品となる犬や猫を早いサイクルで売る必要があります。そこでペットショップが行う施策として、買い手がつきやすい仔犬や仔猫の販売数を増やしたり、来店客に抱っこをさせたりすることで「衝動買い」を誘発します。その結果、店舗で犬や猫を飼う人の9割が“一目ぼれ”で購入を決めていると言われています。

店舗はあくまで自社の利益追求を重視しているため、飼い主の責任能力までは問いません。安易に飼い始めたペットは、安易に放棄されやすく、ペットショップによる衝動買いの誘発が問題となっています。

仔犬や仔猫を早期に親元から離してしまう

ペットショップが仔犬や仔猫を販売することにより、仔犬や仔猫は生まれて間もない時期に親の手から引き離されることとなります。

事故や病気などやむを得ない事情ではなく、人間の都合で親子を引き離してしまうことは、倫理上問題があることです。

また、幼い時期に親犬や親猫から適切な愛情やしつけを受けられず、かみ癖がついたり人を攻撃したりと問題行動を起こしやすくなるとも言われています。

劣悪な環境下で犬猫を育てる店の存在

ペットショップでの犬や猫の販売が禁止された背景にはさらに、劣悪な環境下で犬や猫を育てる店舗の存在がありました。

日本でも、2021年11月に前例のないほど悪質な犬繁殖業者(長野県松本市)が摘発されています。その業者では合計約1000匹の犬が不衛生な環境で多頭飼育され、飼っている犬が病気になっても適切な治療を行いませんでした。それだけでなく、麻酔なしで帝王切開を行う卑劣な行為がされていました。

こうして劣悪な環境で育てられた結果、買い手が決まる前に病気にかかったり、命を落としたりする犬や猫が多くいることも大きな問題です。

売れ残ってしまった犬猫への問題対応

買い手が決まる前に病気にかかったり、売れ残ってしまったりした犬や猫の多くは、保護施設に移されます。しかし、ペットショップで殺処分される、捨てられるなどが起きていることも、ペットショップが問題視される要因のひとつとなっています。

ペットショップ以外での犬や猫の迎え方

ペットショップ以外での犬や猫の迎え方

ペットショップでの犬猫の販売が禁止された後、犬や猫を迎えたい場合はどのように迎えれば良いのでしょうか?今後日本でもフランス同様にペット販売が禁止されることを想定して、店舗での購入以外の迎え方を考えてみましょう。

保護施設から引き取る

保護施設から引き取る場合、収入状況や生活環境など厳しい審査があります。また、引き取り後も自宅訪問やヒアリングなどが行われ、犬や猫が育つ環境として適切かどうかが確認されます。

犬や猫を迎えたいと思ってから実際に迎えるまでに高いハードルがありますが、何らかの事情で保護施設に入った犬猫を救うこともできる良い手段と言えます。

信頼できるブリーダーから直接購入する

犬猫を迎えるためのもうひとつの方法として、ブリーダーから直接購入する方法があります。仲介している業者がなく、直接やりとりができるため、適正価格での購入が可能です。

ただしこの場合、信頼できるブリーダーを探すことが大切です。電話対応やメールでのやり取りや、迎えたい犬猫の育った環境を直接見せてもらうことで判断が出来るでしょう。

犬や猫を迎える前に責任と覚悟を持とう

ペットショップの問題は、犬や猫を幼いうちから販売して衝動買いを誘発すること、そして、劣悪な環境下で犬や猫を育てる業者が存在することです。しかしその背景には、迎えたペットを身勝手な理由で捨てる個人の行動がありました。

つまり、ペットショップだけの問題ではなく、飼い主となった個人にも問題があると言えます。犬や猫を迎える前に、旅行の際の対応を話し合っておく、問題が起きた場合に相談出来るペットショップや病院を探しておくなど、覚悟と責任を持って迎えましょう。

私たちがこれから犬や猫を迎えるうえで必要なものは、「ペットを飼う」ではなく「家族として共存する」意識ではないでしょうか。

フランスでは2026年からイルカやシャチのショーが禁止され、2028年には移動式サーカスでの野生動物利用も禁止されます。こうした動きを受けて、今後ますます世界各国で動物との向き合い方を考える機会が増えるはずです。

私たちは、動物にものびのびと生きる権利があることを理解し、そうした環境を作れるよう努力していきましょう。

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