塩にもマイクロプラスチックが?水環境の現状と対策、今すぐ出来る取り組みを紹介|circu.(サーキュ)

2022.06.05

塩にもマイクロプラスチックが?水環境の現状と対策、今すぐ出来る取り組みを紹介

塩にもマイクロプラスチックが?水環境の現状と対策、今すぐ出来る取り組みを紹介

私たちが毎日必ず口にする「塩」。身体に入れる食べ物は、安全安心なものにこだわりたいものです。しかし、水質汚染が深刻化している昨今、海水から採れる「塩」への影響はないのでしょうか?そこでこの記事では、水環境問題が塩に与える影響について解説します。いつまでも信頼できるものを口に出来るよう、私たちに出来る対策も紹介します。

塩が受ける水環境問題の影響とは

塩が受ける水環境問題の影響とは

2018年、世界の塩ブランドから集めた9割以上のサンプルから、マイクロプラスチックが見つかりました。仁川大学校のキム・スンキュ教授と国際環境NGOグリーンピース・東アジアの共同企画の研究によって発表されたものです。

マイクロプラスチックとは、海に流れ出たプラスチックのごみが風や波で削られ、粒子が5mm以下になったものを指します。

その多くは、私たちの日常生活や経済活動によって排出されたプラスチックごみです。マイクロプラスチックが魚や貝などの海洋生物に影響を及ぼしていることは、昨今多くの報道で取り上げられています。

海洋生物への影響については、こちらのサイトがわかりやすく解説しているので参照ください。

私たちが出すプラスチックごみによる水環境の汚染問題は、塩にまで影響を及ぼしています。キム・スンキュ教授とグリーンピース・東アジアの研究によると、世界39ブランドの塩を分析したところ、海塩は最も高いプラスチック汚染レベルを示しました。さらに湖塩、岩塩と続いていることから、内陸で採れる塩も同様に汚染されていることがわかります。

私たちの食生活に、塩は欠かせません。既に、私たちの体内もプラスチック汚染から逃れられない状況にあると言えます。

水環境問題による塩の汚染 人体への影響は?

水環境問題による塩の汚染 人体への影響は?

私たち人間は年間最大2,000個のプラスチックを、塩から摂取していると言われています。これだけ多くのプラスチックを摂取して、人体に影響はないのでしょうか?近年、マイクロプラスチックによる人体への影響は、世界中で研究が進められています。現状では研究結果からは、必ずしも人体に悪影響があるという確証は得られていません。

しかし、令和2年に環境省水・大気環境局水環境課海洋プラスチック汚染対策室がマイクロプラスチックによる生物への影響について発表しています。

具体的には、生物影響試験の結果、経口摂取されたプラスチックによって消化活動の機能不全、配偶子の質の低下、運動能力低下などが見られたとしています。さらに、マイクロプラスチックは口から体内に入った後、肝臓など胃以外の臓器に移行し、影響を及ぼすこともわかりました。

これらを踏まえ、今後も継続してマイクロプラスチックによる生物への影響の研究を進め、定量的に明らかにすべきと述べています。

また、マイクロプラスチックは化学物質を吸着するということはわかっており、吸着された化学物質による人体への悪影響も懸念されています。

安全安心な塩のため 日本が行っている取り組み

安全安心な塩のため日本が行っている取り組み

マイクロプラスチックに汚染されない安全安心な塩を得るため、日本政府は2019年に「海洋プラスチックアクションプラン」を策定しました。

水質改善だけでなく、生態系保護の観点も踏まえ、8カテゴリーに分けて取り組みの内容がまとめられています。具体的には、プラスチックごみの海洋流出を徹底的に抑えるための取り組みや指標が示されています。

例えば、容器包装等のポイ捨てや漁具等の海洋流出が発生に課題があることから、法律(廃棄物処理法、海洋汚染等防止法等)や条例(ポイ捨て禁止条例)違反の監視・取締りを徹底したり、毎年「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」(5/30~6/5)を中心とした国、自治体等による集中的な監視パトロールの実施を行ったりなど、具体的なアクションへ繋げています。

リサイクル施設の整備や海洋流出したプラスチックごみの回収といった日本国内での取り組みにとどまらず、途上国に向けた廃棄物発電など環境インフラの導入支援なども含んでいます。

アクションプランに対する結果は毎年進捗確認が行われ、3年後となる2022年を目途に内容の見直しが行われる予定です。

水環境問題に対して、今すぐ私たちに出来ること

安全な塩を得られるよう水環境を守るため、私たちがすぐに出来ることは大きく2つあります。1つは、プラスチックごみを減らすこと。2つ目は、プラスチックごみを海や川に流出させないことです。

プラスチックごみには、不本意に流出した漁業網が含まれることもあります。しかし、ほとんどは私たちが生活するうえで廃棄したものです。そこでまずは、個人で出来る対策を行いましょう。

プラスチックごみを減らす

スーパーやコンビニエンスストアのレジ袋が有料化されて以来、エコバッグの使用は定着したと言えます。また、プラスチックストローの代わりに紙のストローを提供するお店も増えています。今後はスプーンやフォークなどのカトラリーも持ち歩けば、さらにプラスチックごみを減らせるでしょう。インターネットですぐに購入出来るので、手軽な取り組みと言えます。

また、最近では街中に無料の給水ポイントが増えています。これまでは喉が渇いたらコンビニエンスストアや自動販売機で飲み物を買い、ペットボトルや缶のごみが発生していました。しかし、無料の給水ポイントが出来たことにより、マイタンブラー・マイボトルを持ち歩くだけで飲料水が手に入り、水を買わずに済むようになりました。

ごみの発生を抑えるだけでなく節約にも繋がるサービスで、すぐに取り入れやすい取り組みです。

シェアリングサービスを利用することもまた、ごみの削減に繋がります。例えば、ビニール傘は急な雨で必要になるものの、その後は家にたまりがちではないでしょうか。ビニール傘は街中でのシェアリングサービスが増えていて、後日傘を返却するので家にたまってしまうことなくごみも削減できます。

プラスチックごみの流出を防ぐ

プラスチックごみが海や川に流出する原因の多くは、ポイ捨てです。ごみの海洋流出を防ぐにはポイ捨てをせずに、ごみはごみ箱に捨てることが重要です。自分が出したごみに最後まで責任を持つ、という意識が大切です。

ただし、風によって不本意にごみが海洋流出してしまう場合もあります。そこで、ごみが落ちていたら拾ってごみ箱に捨てる習慣を身に着けたいものです。

さらに、街のごみ拾いボランティアやビーチクリーンと呼ばれる海岸清掃に積極的に参加することもおすすめです。一時的であってもごみの流出を抑えるだけでなく、どんなごみがどれだけ流出してしまっているのか、現状を知る貴重な経験となるでしょう。

この他、スクラブ剤を含む洗顔料や歯磨き粉を使用することも、マイクロプラスチックを海洋流出させることに繋がります。ポリエステルやナイロンのような合成繊維を洗濯することも、同じことが言えます。

これらはごみのポイ捨てとは性質が異なり、直接プラスチックを海や川に捨てているわけではありません。そのため普段生活をしているうえではわかりづらく、ここまで踏み込んだ対策をするには、積極的に情報を得る必要があります。

下記記事では、マイクロプラスチックを減らす取り組みを11項目に分けて、より具体的に解説しています。すぐに出来る取り組みばかりなので、ぜひ併せてご覧ください。

安全な塩を口にするために、現状を把握し、出来ることから始めよう

私たちが口にしている塩は、既にマイクロプラスチックによる影響を受けています。便利を優先したこれまでの生活によってプラスチックごみを排出し、水環境を悪化させた結果、反対に私たち自身の健康を脅かしを苦しめることになっているのです。

そして、その影響は私たちだけでなく、他の生物、自然環境、地球環境にも及び、改善に向けた早急な取り組みが必要です。

環境を汚してしまったのは人間ですが、改善することもまた、人間にしか成し得ないことです。改善を急ぐには、今の便利さを手放してでもすぐに行動する必要があります。それだけ緊迫した状況にあることを、私たちはまず知らなくてはなりません。

これから安全安心な塩を口に出来るよう、そして地球環境を守れるよう、今世界で何が起きているのかを知ることが大切です。一人ひとりがその原因を考えて対策を行うことで、大きな力になるでしょう。

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