2021.05.05
海洋汚染や生態系への悪影響の原因と言われている「海洋プラスチック」。最近では、ニュースや新聞でよく見かける言葉となりました。
しかし、海洋プラスチックがどんなもので、どういった影響があるのか、具体的に説明ができる人は多くないと思います。
そこで本記事では、海洋プラスチックとは何か、環境や生態系にもたらされる悪影響への対策について紹介します。
海洋プラスチックという言葉をよく耳にしますが、それが何か具体的に説明できるでしょうか?どんなものを指すのか、詳しく見ていきましょう。
海洋プラスチックとは、日常生活や経済活動によって排出され、海に漂着したプラスチックごみを指します。漂着の原因は、雨や風など何らかの経緯で海に流れ着いた、または、人が海や川に直接捨てたことが考えられます。
環境省が平成30年に発表した「海洋ごみをめぐる最近の動向」では、海に漂着したごみを素材別に分類した場合、重量、容積、個数のいずれにおいても、プラスチック製のごみが占める割合がもっとも高いとされています。(自然物を除く)
さらにプラスチック製のごみを分類すると、飲料用ペットボトルや持ち帰り弁当などの容器やカトラリーが全体の割合の半数を超えることがわかりました。
2020年7月1日から買い物時のプラスチック製レジ袋有料化が実施されている背景には、こうしたプラスチックごみを削減する目的があります。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、食事のデリバリーやテイクアウトの機会が増え、結果としてプラスチックごみの漂着量が増えている懸念があります。
海洋プラスチックが増えることで、環境や生態系に悪影響があると言われています。海洋プラスチックの削減を目的として、現在、日本だけでなく世界中でさまざまな取り組みが行われています。
では、具体的にどのような悪影響があるのでしょうか。
一度海に流れ出たプラスチックのごみは、波に削られるなどして小さなプラスチック粒子となります。この粒子が5mm以下になると、「マイクロプラスチック」と呼ばれることになります。
マイクロプラスチックは自然分解されることなく、海に浮遊したり、海中や海岸の砂に蓄積したりして、数百年以上、自然界に残留すると考えられています。
また、マイクロプラスチックは海に残る化学物質を吸着すると言われています。本来は自然界にないものが化学物質を吸着して滞留することで、長い時間をかけて環境をむしばむということが懸念されています。
WWF (「World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)」)によると、魚や海鳥、アザラシ、ウミガメなどの生物のうち、海洋ごみによって傷ついたり命を落とす原因の92%が海洋プラスチックによるものだそうです。
例えば、海に廃棄されたプラスチック製の魚網に絡まったり、ポリ袋を餌と間違えて飲み込んでしまうことが原因とされています。
こうして自然発生とは異なる海の生態系への影響原因で生物の命を失うことで、生態系を崩すこととなり、自然のバランスを壊してしまうこととなります。(WWFホームページ)
また、同じように誤飲してしまうマイクロプラスチックが吸着している化学物質には、ホルモンのバランスを崩し、生殖機能に悪い影響をもたらす、魚の肝臓障害を引き起こすものがあることがわかっています。(MIRAI PORT)
マイクロプラスチックが吸着した化学物質により魚の生殖機能が失われることで、魚の数が減り、生態系への悪影響が懸念されているのです
魚が化学物質を吸着したマイクロプラスチックを飲み込んでしまうと、その魚を食べる人間の体にも影響がでることはすぐに想像がつくでしょう。
人間の生殖機能への悪影響のほか、胎児への成長にも影響を及ぼすと言われています。また、魚の数が減れば漁獲量全体にも影響し、魚の価格が高騰することも考えられます。いつか食卓に魚があがらなくなる日が出てきてしまうかもしれません。
海洋プラスチックは、海に漂着したペットボトルやプラスチックトレイを指しますが、その小さな破片であるマイクロプラスチックのもとは他にもあります。
実は、洗顔料や歯磨き粉のスクラブ剤として使われていたり、フリースなどの合成繊維の洗濯時に流れ出ていたりします。
では、こうした環境悪化の原因となる物質を減らすために具体的に何ができるのか、考えられる対策を紹介します。
プラスチックごみを出さないためには何より、プラスチックを使わないことです。エコバッグやマイカップを使うことは、少しずつ浸透していると思います。
そのほか、マイスプーンやマイストローを持ち歩くなどもすぐにとり入れられるでしょう。また、マイクロプラスチックを減らすには、スクラブ入りの洗顔料や歯磨き粉の使用を避ける、できる限り天然素材の衣類を身につけるなども考えられます。
3Rとは「リデュース(Reduce)」「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」の3つの頭文字をとった環境に配慮した言葉です。
「リデュース」とはゴミを減らすこと。製品を作るときの資源の量を減らし、耐久性のある製品を作ることで長く使ってもらえるようにする取り組みをします。「リユース」は、不要になったものをすぐに捨ててしまうのではなく、次に必要としている人に譲り繰り返し使うことです。メルカリやフリーマーケットなどで出品するのもリユースの取り組みになります。
「リサイクル」は、プラスチックトレイや紙パックなどをして、新たな資源に戻して製品を作る取り組みです。私たちも積極的に協力することでゴミを減らすことができます。最近では不要になった衣類を回収し、別の衣類に生まれ変わらせるブランドも増えているので、不要なものがある場合は捨ててしまう前に再利用ができないか調べてみましょう。
ただし、リサイクルするにもエネルギー(燃料)を必要とします。そのエネルギーにより新たな環境への悪影響が生まれることもあり、そもそものプラスチック使用量を減らすことが1番の対策と言えます。
近年では日本でも、「ビーチクリーン」という言葉を聞くようになりました。ビーチクリーンとは、砂浜のごみを拾って集める活動です。参加してみると、どれほどプラスチックのごみが多いかを体感できます。
活動に参加する人が増えることで、物理的にごみの量が減るだけでなく、「ビーチクリーン」の認知が広まることで賛同者も増えていくプラスのサイクルが生まれます。日本全国で実施しているので気になるエリアを探してみてください。
これまで「海洋プラスチック」という言葉を聞いたことはあるものの、具体的に説明ができるほどの理解ではありませんでした。しかし、調べてみると「海洋プラスチック」は私たちの生活に非常に密接に存在していて、毎日必ず手にしている「プラスチック」から発生したものでした。
「海洋プラスチック」を減らすために毎日使っているものを大きく減らすことは、難しく感じるかもしれません。でもあまり深く考えすぎず、今取り組んでいるエコバッグを持つことのような小さな一歩から自分の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
その小さな一歩によって、例えば、毎日多くのレジ袋を使っていたことに気づいてもっと減らせないか考えることが楽しくなったり、お気に入りの柄のエコバッグを持って出かける楽しさに気づいたりと新たな発見が生まれるかもしれません。
そうしてひとりひとりがプラスチックの使用量を減らすことで、より取り組みが加速し、環境への負荷が低減します。環境負荷を低減することは将来、自然豊かな住環境で安全な食事ができて暮らしやすくなることに繋がります。
そこでこれからは、今まで優先度高く選択してきた便利さではなく、少し先の暮らしやすさを選択する生活を目指していきましょう。
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