2022.06.25
砂漠化とは、陸上に植物が生育せず不毛の地となることです。砂漠化は、陸上だけで起きていると思われがちです。しかし実際は、陸だけではなく海の中でも発生していて、海藻が育たない現象が起きています。海藻が育たなければ海水は汚れ、海水浴やダイビングができなくなる可能性があります。
また、その影響で海の生物も育たず、魚や貝は食べられなくなるでしょう。そこでこの記事では、海の砂漠化について知りたい方向けに、発生の原因や対策を解説します。
「海の砂漠化」とは、さまざまな原因によってコンブやワカメなどの海藻が生えなくなり、岩場の表面が「石灰藻」と呼ばれる白い小型藻類に覆われる現象のことです。
1965年頃から北海道をはじめ多くの海で確認されている現象で、多くの藻場(もば)が消失しています。 上図は環境省が過去に瀬戸内海で行った調査結果です。1960年から1990年までに約7割のアマモ場が消失したことがわかっています。
海藻が消滅する現象は、「磯焼け」とも呼ばれます。広義では、砂漠化は磯焼けに含まれます。しかし、厳密には石灰藻の発生の有無によって区別されます。
岩石や岩盤が石灰藻に覆われた場合に砂漠化と呼ばれ、発生した場合は数十年~数百年回復しない可能性があるとも言われています。
自然環境だけでなく私たちの暮らしにも影響を及ぼす「海の砂漠化」は、なぜ起きるのでしょうか?実は、砂漠化の原因は複数あるとされていますが、明確な原因はわかっていません。
しかし石灰藻の発生を生じない、藻場の減少や磯焼けの発生原因は大きく3つあります。ここでは、藻場の減少や磯焼けの発生原因について解説します。
沿岸部の埋立ては、物理的に藻場を消失させます。
埋立ての多くは廃棄物処理の手段として行われており、ごみ問題が藻場の減少に繋がっているとも言えます。
水質悪化の原因は、森林伐採や農薬や工場排水の不法投棄、土砂崩れや津波による自然災害です。こうした直接的な水質汚染の原因のほか、温暖化による水温変化も水質悪化を招きます。
水質悪化と海藻の減少は悪循環となっていて、どちらが先と言い切れない状況です。水質が悪化すると海水の透明度が下がります。すると海藻に太陽光が届かず、光合成が出来なくなるため、更なる海藻の減少を引き起こします。
海藻の減少が、更に水質悪化を招くというように、その原因を断ち切らない限り、負の連鎖は続きます。
海藻の原因としてさらに挙げられるのが、藻食生物の増加です。
藻食生物とは、海藻をエサとする魚やウニのことで、西日本ではアイゴやブダイ、北日本ではウニ類を指します。
こうした藻食生物が増えすぎることで海藻が減少し、生態系のバランスを崩す原因となっています。
「海の砂漠化」が発生した場合、環境だけでなく私たちの生活にも深く関わる3つの問題が起きます。それぞれ大きな問題となるため、詳しく解説します。
コンブやワカメなどの海藻が集まる「藻場」は、海の生物にとって隠れ場所や産卵場所、 水の浄化、海中に酸素を供給するなど、さまざまな役割を果たしています。
砂漠化により藻場が失われると、海の生物にとって住む場所やエサを失うだけでなく、産卵場所がなくなり子孫を残せなくなるなどの、悪影響が考えられるのです。海の生態系は破壊され、藻場で育った魚や貝を捕食していた生き物も生きられなくなるでしょう。
藻を食べる生物の中には、ウニやアワビ、サザエなど私たち人間が食べているものも含まれ、砂漠化により、海の生物が育たなくなることで、人間も食べるものを失うのです。
ウニやアワビを獲って暮らす人々の生活も成り立たなくなり、雇用も失われるなど大きな影響が想定されます。
海藻は、海の生物にとっての住処や餌場の役割だけでなく、水質浄化の役割も担っています。具体的には水中の有機物を分解して栄養塩類や炭酸ガスを吸収し、酸素を供給していて、陸上の森林と同様の役割を持っているのです。
砂漠化によって海藻が消失すると、水質浄化の役割を担うものがなくなり、水質は悪化します。水質が悪化すれば、海の生物は生きる場を失います。
また、私たち人間は、海水を浄化して飲用水を得ています。しかし海水の水質悪化が進めば、現在より高度なろ過技術が必要となるでしょう。
この場合、技術が進歩するまで水が飲めなくなる懸念があるうえ、水を得られても高額で購入せざるを得なくなるかもしれません。
海藻が育たず水質が悪化することによって、海の生物はいなくなり、水の透明度も下がるためシュノーケリングやダイビングが楽しめなくなります。
私たちにとってレジャーが失われることそのものも問題ですが、マリンスポーツで生計を立てる人にとっては、生活に直接関わる問題であり、観光にも打撃を与える問題です。
「海の砂漠化」への対策としてまず重要なことは、石灰藻が増える原因究明です。しかし並行して、海藻の減少や磯焼けをなくす対策を行い、海藻を増やすことも大切です。
そこでここでは、海藻を増やすために現在行われている取り組みや、私たちがすぐに出来ることを紹介します。
国や自治体で行われている取り組みは、大きく2つに分けられます。1つは、藻食生物の駆除です。アイゴやウニなど藻を食べる生物を駆除することで、海藻の減少を食い止めようとしています。
さらに2つめの取り組みとして、埋め立てや開発で作られた海岸に、人工的に干潟や浅場を作ってアマモを移植する活動が行われています。
神奈川県葉山市では、漁業者や町民によってアマモの種子の採取や選別、 苗の生産、アマモ苗の移植や移植後のモニタリングなど多岐にわたる活動が行われています。
こうした取り組みは福井県や愛知県でも行われており、日本各地で広まりを見せています。
私たちが海藻が育つ環境を守るために出来る取り組みは、水質悪化の原因をなくすことです。つまり、海を汚さない努力が必要です。
具体的には、ごみをごみ箱以外の場所に捨てない・流さない、プラスチック製品の使用を避けるなどです。
こうした取り組みが日常生活で出来ている場合には、ビーチクリーンのような活動への参加もおすすめです。また実際に、海藻の移植作業に参加するのも良いでしょう。
砂漠化は、陸だけでなく海中でも深刻な問題となっています。海の砂漠化を止めるために私たちが出来ることは、簡単で、当然のこと、と思うかもしれません。
しかし、当たり前の行動を、ひとりでも多くの人が長く続けることが重要です。
このまま海の砂漠化が続けば、マリンレジャーがなくなり、私たちの食生活や雇用も失われ、自然環境も破壊されます。そうした事態を防ぐため、今すぐ出来ることから地道に取り組んでいきましょう。
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