2022.07.20
近年、ヨーロッパを中心に、飛行機ではなく陸路を使って旅行を楽しむ人が増えています。飛行機が排出する多量のCO2による環境負荷を懸念し、環境に配慮するためです。
私たちが活き活きと過ごすためには、旅行による気分転換が欠かせません。しかしその旅行が環境問題の原因になれば、温暖化が進み、やがて旅行が出来なくなってしまいます。
そこでこの記事では、環境に配慮して旅行を続けたい人に向けて、交通手段によるCO2排出量の違いや私たちに出来ることを紹介します。
ヨーロッパやアジアの一部の地域は陸続きであるため、陸路での移動が可能です。そのため、環境配慮の観点から、飛行機ではなく長距離電車での移動を選択する人が増えています。
飛行機がほかの手段と比較してどれほど多くのCO2を排出するのか、具体的にみてみましょう。
グラフは、交通機関ごとのCO2排出量を比較したものです。2019年度に国土交通省のホームページに掲載されたのち、東京都観光局のホームページに掲載されました。
CO2排出量は自家用乗用車がもっとも多く、次いで飛行機による排出量が多いとされています。また、飛行機と比較するとバスや鉄道のCO2排出量が少ないことが示されています。
この結果、環境配慮の観点ではバスや鉄道といった公共交通機関の利用が好ましいと言えます。
私たちが旅行をすることによって起こる環境問題は、移動によるCO2排出だけではありません。そこで、CO2排出以外の環境問題にも目を向けてみましょう。
日本では富士山でのごみのポイ捨てや不法投棄の問題がたびたび採り上げられますが、各国の観光地では同じ問題が発生しています。
観光客によって捨てられるごみはペットボトルやビニール袋が多く、マイクロプラスチックの発生原因にもなり、環境に悪影響を及ぼしています。
例えば温泉旅館では、食べきれないほど多くの食事がふるまわれます。ビュッフェスタイルで提供されることもあり、大量の食品ロスが問題となっています。
旅館やホテルにとって食事の提供は、宿泊客をもてなす大切な手段です。そのため、不足することがないよう多く準備することが一般的です。
しかし環境負荷の観点で見た場合、食品ロス増加の原因となるため、改善すべき問題と言えます。
私たちが旅行によって招く水質汚染の原因は、大きく2つあります。
1つめは、宿泊先でのリネンの洗濯です。
客室で使うタオルやシーツなどのリネンの洗濯に大量の水を使い、水を汚しているのです。
2つめは、日焼け止めの使用です。
ハワイではすでに、指定化学物質入りの日焼け止めの使用が禁止されました。日焼け止めの使用が海の水質を変え、サンゴ礁破壊の原因となっています。
旅行によってプラスチックの廃棄量が増える原因は、宿泊先でのアメニティ使用、ペットボトル飲料やビニール袋の消費によるものです。
特に歯ブラシセットは宿泊している数日間で使い捨てされ、多くの場合、まだ使える状態で廃棄されています。また、旅先ではペットボトル飲料を飲む機会が増えたり、おみやげを買うことでビニール袋の消費量も増えるでしょう。
これまで、私たちが楽しんできた旅行が環境負荷の原因となっていました。
では、今後も旅行をサスティナブルに楽しむために、私たちには何が出来るのでしょうか。
移動手段には自家用車やレンタカー、飛行機ではなく、公共交通機関を優先しましょう。
目的地までの公共交通機関がない場合は、タクシーや配車サービスの活用も有効です。
また、移動手段が飛行機しかない、どうしても時間が惜しいという場合、飛行機は乗継便ではなく直行便がおすすめです。飛行距離が短くなるためCO2排出量の抑制に繋がるほか、時間も節約出来ます。
最近では、インターネット上で飛行機の座席を予約する際、CO2の排出量を調べたり、CO2排出量の少ないフライトを選ぶことも出来るようになっています。
その他、旅行ではなく出張の場合は、やむを得ない事情でない限りオンライン会議への切り替えを検討するのも良いかもしれません。
食品ロスを減らすため、旅館やホテルでふるまわれる食事はすべて食べきりましょう。マナーの観点でも、残さず食べることが良いと言えます。どうしても食べきる自信がない場合は、事前に宿泊先に連絡し、食事の量を減らしてもらいましょう。
食品ロスを問題視する旅館やホテルは多く、最近では「食事少なめ」を打ち出した宿泊プランも見られます。
同じ宿泊先に連泊する場合は、リネンの洗濯を依頼する頻度を減らしましょう。それだけで、水の節約になるほか、海や川を汚すリスクを減らせます。
ハワイでは現在、「オキシベンゾン」「オクチノキサート」の2種類の化学物質を含む日焼け止めの使用が禁止されています。ハワイ以外の国や都市でも同じように、環境に優しい日焼け止めを使って水質環境の悪化を防ぎましょう。
近年、マイボトルを持ち歩くことは定着しつつあります。しかし、旅行にも持参する人はまだ少ないのではないでしょうか。
新幹線や長距離電車で手にするペットボトルや、飛行機で使用する紙コップはすべて、最後はゴミになります。そこで、旅行にもマイボトルを持って行く習慣を身につけましょう。ただし、飛行機内へのマイボトルの持ち込みは、容量制限があるので注意が必要です。
また、宿泊先のアメニティを使わずに済むよう、普段自宅で使っている歯ブラシを持参したり、シャンプーを小分けにして持参しましょう。
さらに、おみやげの購入に備えてマイバッグも必要です。おみやげは必要な人に必要な分だけ買うことも、環境配慮と言えるでしょう。
旅行は私たちにとって気分転換の機会であり、生活の質向上に欠かせません。しかし、その旅行が環境破壊の原因となり得ることを意識して、環境に配慮した旅行を続けたいものです。
そのためまず、これまで長い年月をかけて作り上げられた自然によって、リフレッシュさせてもらっているという感謝の気持ちを持つことが大切です。そして、感謝の気持ちを表すために、旅の楽しみ方を見つめ直して、ひとりひとりが出来ることを行っていきましょう。
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