コーヒーが飲めなくなるって本当?コーヒーの2050年問題と対策|circu.(サーキュ)

2021.12.19

コーヒーが飲めなくなるって本当?コーヒーの2050年問題と対策

コーヒーは私たちにとって、リラックスしたい時や集中したい時に欠かせない飲み物のひとつですよね。

しかし、気候変動によるコーヒーの価格高騰や品質低下が危惧されていることはご存知ですか?2050年までにコーヒー豆の収穫量が大幅に減少すると言われており、今後コーヒーが飲めなくなる、あるいは高級嗜好品になってしまうかもしれません。

この記事では、「コーヒーの2050年問題」という言葉を初めて聞いた人に向けて、問題の原因や対策について解説します。

コーヒーの2050年問題とは?

コーヒーの2050年問題とは、コーヒー豆の60%強を占めるアラビカ種の栽培に適した土地が、2050年までに現在の50%まで減少すると言われる問題です。この原因は、コーヒーが元来持つ繊細な性質と地球温暖化に関係します。

アラビカ種は他のコーヒー豆の品種よりも味が良く、品質が高いため重宝される一方で、栽培条件が厳しく手間がかかるうえ、病気にも罹りやすいという性質を持ちます。

そのため気候変動の影響を受けやすく、地球温暖化によって栽培適地が失われつつあるのです。

アラビカ種は、年間気温18~21℃となる土地での栽培が適しています。しかし、温暖化によって年間気温が上昇し、これまで栽培に適していた土地での栽培が困難になります。

また、温暖化による海水の気化は湿度の上昇をもたらし、コーヒー豆にとって深刻な病気である「さび病」の発生原因となります。さび病は、カビの一種である「さび病菌」に植物が感染する病気です。気温9~18℃前後の湿度が高い環境で発生します。

しかし、その一方で世界中の人に愛されるコーヒーは、2050年には現在のコーヒー生産量を6,000万から1億8,000万袋上回る生産量が必要になると予測されています。現在の世界のコーヒー生産量の2倍にあたるとされ、需要に対する供給が追いつかないことも課題になっています。

国際研究機関「ワールド・コーヒー・リサーチ」では、コーヒー大生産国のブラジル、インド、ニカラグアなどは、2050年までにコーヒーの生産に適した土地の60%以上が失われると警告しています。

コーヒーの2050年問題によって起こり得る問題

コーヒーの2050年問題は、大きく分けて3つの問題を引き起こします。
詳しくみていきましょう。

品質低下

2050年問題の原因である温暖化は、コーヒー豆の品質低下を引き起こします。さび病の発生や生育条件をクリアしコーヒー豆が実っても、味の質がクリア出来なければ、出荷出来ず、市場に出回る豆は限られた人しか買えないものとなってしまいます。

生産者数の減少

コーヒー豆の収穫量・出荷量の減少は、生産者に経済困窮をもたらします。そこで経済的理由からコーヒー豆の生産を断念する農家が増え、生産者の減少へと繋がります。

生産者の減少はさらなるコーヒー豆の収穫量の減少を招き、悪循環が生まれる要因となるでしょう。

価格高騰

コーヒー豆の品質低下、収穫量・出荷量の減少は、コーヒーの価格高騰へと繋がります。市場に出回るコーヒー豆は希少価値があり品質の良いものとなるため、必然的に価格が高騰します。

一方、前述した通り、世界全体でコーヒーに対する需要は増加傾向にあります。日本でもカフェ文化の浸透と共に、需要が伸びています。

さらに、コーヒーの輸入国であるEUやアメリカでの需要が伸びており、今後は中国をはじめとしたアジアでの需要が伸びるとみられています。

こうして需要と供給のバランスが崩れることも、今後の価格高騰を生み出す要因となります。

コーヒーの2050年問題への対策

コーヒーの2050年問題への対策として、温暖化を鈍化させることとアラビカ種への需要を他品種への需要に切り替えることが考えられます。対策を実施するための、3つのアイデアを紹介します。

地球温暖化対策の実施

地球温暖化を鈍化させることは、コーヒー豆への悪影響を小さくすることと言えます。そのため、日頃から環境に配慮した企業活動や私たち個人の行動が求められます。

なかでもコーヒー業界に限定した場合、現在行われている地球温暖化対策として、廃棄されるコーヒー豆のかすをバイオ燃料に生まれ変わらせるという活動があります。

従来はほとんどが産業廃棄物として捨てられていたコーヒー豆のかすをバイオ燃料に変えて焙煎に用いることで、廃棄量や廃棄物を燃やす際のCO2排出量を減らせます。

新品種の開発

アラビカ種減少の懸念を受け、World Coffee Research(WCR)という研究機関がInternational Multi-Location Variety Trial(IMLVT)という計画を進めています。

この計画によって病気に罹りづらく、気候変動にも対応可能な新しい品種開発の研究が行われています。

IMLVTによる研究開発が進み、新たなコーヒー豆の品種が生まれれば、アラビカ種の消費量を減らすことに繋がり、急激な価格高騰や収穫量減少への懸念を払拭出来ます。

代用コーヒーの提案

近年、コーヒー豆で作るコーヒーではなく、代替原料で作られる飲料を勧める動きが広がっています。原料や成分から言えばコーヒーではありませんが、コーヒーの風味が楽しめる飲料として注目を集めています。

なかでもたんぽぽの根から抽出されるたんぽぽコーヒーや、野菜であるチコリの根を焙煎して作られるチコリコーヒーは、人気が高まっています。

サスティナブルの観点では、植物の根を使うたんぽぽやチコリの飲み物よりも果実であるコーヒーの方が環境に良いと感じるかもしれません。しかし豆の収穫量が減る中では、代替飲料との併用が望ましいと言えます。

他にも、玄米や大豆から作られた代用飲料も販売されていて種類が増えています。それぞれ味の特徴も異なるので、気分や好みによって楽しみながら選べると良いでしょう。

コーヒーの2050年問題解決のため、私たちにできること

コーヒーの2050年問題への対策として、私たちが出来ることは、地球温暖化の改善に向けた行動を日頃から行うことです。そこで、私たちに出来る行動の一部を紹介します。

省エネを心がける

節電、節水はあらゆる場面で環境対策として言われていますが、限られた資源を有効に使うためには欠かせない行動です。

例えば水不足が起きてしまうと、コーヒーを育てる水もコーヒーを飲むための水もなくなることになります。こうした事態を防ぐためにも、日頃から省エネを心がけましょう。

プラスチック製品の使用を避ける

プラスチック製のビニル袋の代わりしてエコバッグを使うことは、近年、日本でも浸透しました。最近ではさらなるプラスチックの使用量削減を目指し、プラスチックストローの提供を廃止して、紙ストローを使用するお店が増えています。

そこで個人が出来ることとして、マイストローやタンブラーの持参が挙げられます。特に冷たい飲み物にはプラスチック製の容器、プラスチック製のストローが使われることが多いため、タンブラーやマイストローの持参によって、プラスチックの使用量を削減出来ます。

また、店内で温かい飲み物を飲む場合はマグカップに入れてもらう、テイクアウトする場合はプラスチック製のフタは不要であると申し出るなども手軽にできる行動です。

代用コーヒー飲用の機会を増やす

あらゆる商品は、需要に応じて供給されます。つまり、コーヒーに対する需要が高まるほど、一層生産量が追い付かずに価格が高騰します

そこで、代用コーヒーを飲む機会を増やすことで、従来のコーヒーに対する需要を減らし、供給量とのバランスをとるという方法も考えられます。

将来も美味しいコーヒーを飲み続けるために 今できることをしよう

地球温暖化は、コーヒーという私たちにとって身近な飲み物にも影響を及ぼしています。このまま対策をせずに時間が経てば、やがてコーヒーという生活の中の楽しみを失うことになります。

地球温暖化を食い止めるためと言うと、壮大な話に聞こえるかもしれません。しかし、2050年以降も美味しいコーヒーを飲み続けられるようにと、より身近な目的へと置き換えて、少しずつでも私たちに出来ることに取り組んでいきましょう。

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