2023.05.04
冬は寒さで体が冷え、室内に入ると暖房で冷えのぼせする、一方、夏の外気に当たると暑さで疲弊し、オフィスやスーパーマーケットでは冷房で冷えて肩こりなどに悩まされますね。私たちは一年を通して気温の変化にとても大きな影響を受けています。
薬膳では、食材には体を温めたり冷やしたりする効能があることをご存知ですか?本記事では、食材を上手に選び食べることで得られる、体を温めたり冷やしたりする効能についてご紹介します。
薬膳の効能と聞いて、まず思い浮かぶのはどのようなことでしょうか?更年期症状や冷えの改善、またデトックスや生理痛の緩和など、いろいろな効能を思い浮かべる方が多いと思います。
薬膳の効能は、多岐にわたります。食材の持つ力を生かして料理し、それを食べることで心身の状態を正常な状態に近づけていきます。冷えやのぼせの改善、デトックス効果などもその一つです。
また、イライラ、鬱々とした気持ちをしずめるほか、病院では病気とは診断されないものの、辛い頭痛が続いている、梅雨のさなかに頭や体が重だるい症状が出ているといった、いわゆる未病の状態を改善することにも利用できます。
薬膳は単一の不調を抑えるのではなく、その不調のもとを探りだして、それを正し、体全体の調子を整えることに重きを置いています。例えば、頭痛がおきているなら、その原因は風邪や腫瘍のような病気が原因なのか、イライラや緊張からくる筋肉のこわばりが原因なのか、それとも冷えからきているのかなど、頭痛の原因を探ります。
日々のちょっとした体調不良を、その原因に合わせた食材を選ぶことで改善する、それが薬膳です。
漢方では、食材の性質を五性という寒・涼・平・温・熱の五つに分類し、それぞれに対応する体内の状態や作用があります。
例えば夏場には涼性や寒性の食材を、冬場には温性や熱性の食材を摂ることで体調を整えることができるなど、食材の性質を知ることによって正しい食生活を送ることができ、健康維持に役立ちます。
中医薬膳学では、人体や食べ物をはじめ、神羅万象、全宇宙のありとあらゆる物を、「陰」と「陽」に分けて考えます。陰と陽とは、常に対立する属性を持っており、この世のすべての物はこのバランスによって成り立っているとされています。具体的には、陰は日かげであり、下の方に沈みゆく内向的で冷え冷えとした気を表します。逆に陽は日なたであり、上に昇る外向的で温かい気を表します。
私たちが健康なとき、私たちの体内では陰陽のバランスが保たれています。しかし、例えば冷え症に悩まされているとき、体内では陰の勢力が強くなることで陰陽のバランスが崩れ、体を温める力が弱くなっていると考えます。逆に、更年期の症状でよくある、のぼせて暑さを感じるというときは、体内では陽の気が強くなることで陰陽のバランスが崩れ、体の熱を冷ますことができなくなっていると考えます。
食べ物には、体を冷やしたり温めたりする働きがあります。この働きを利用して、季節ごとで異なる冷え方に対し、最適な食材を選んで食べることで、冷えを緩和し、体調を整えることができます。
年齢を問わず、多くの女性が抱える身体的な悩みの一つに、「冷え」があります。おなかを中心に体が冷える方、体の中心は温かいと感じるものの、手足が冷えてしまう方など…。おなかに冷えを感じる方の場合は胃腸が冷えて動きが鈍くなり、下痢や便秘を引き起こしてしまうこともあります。一方、手足の冷えが強い方は入浴後もすぐに冷えてしまい、なかなか眠れなかったり、筋肉がこわばって肩こりや頭痛、腰痛に悩まされたりすることが多いです。
冬には冷たすぎる外気に体温を奪われ、体が冷えてしまいます。私たちを取り巻く環境そのものが冷気のなかにあるため、暖房が効いた室内で過ごす時間があったとしても、基本的には冷えやすい状態であると言えます。
逆に、夏になると、地方によっては40℃近い灼熱の環境の中でも、エアコンの効いた室内では、冷気の影響で体が冷えてしまいます。たとえ体が冷えていたとしても、暑さへの対策なくしては、外に出た時には、あっという間に熱中症に陥ってしまう場合があります。そのため、同じ冷え性対策であっても、夏と冬で使用する食材や調理方法を変えることがポイントです。
体を温める働きがある食材には、以下のようなものがあります。
食材種別 | 代表的な食材 |
---|---|
肉類・魚介類 | アジ・イワシ・サバ・鯛・ブリ・鮭・鶏肉・豚のレバー、ラム肉など |
野菜・果物類 | かぶら・かぼちゃ・玉ねぎ・しそ・しょうが・菜の花・ニラ・にんにく アンズ・きんかん・干し柿・モモなど |
穀類・豆類・種実類 | 赤米・米麹・もち米・納豆・カカオ・くり・くるみなど |
上記のように、体を温める働きがある食材は身近にたくさんあります。しかし、その効能を上手に生かすポイントは、季節に合わせた食材選びや調理方法にあります。
冬の寒さが厳しいときには、しっかりと体を温めるラム肉や発酵食品である味噌などを用いて、コトコトと煮込んだみそ汁やスープがおすすめです。寒さが厳しい日には、とろみのあるポタージュスープに仕上げてもよいですね。逆に、夏の暑いさなかにエアコンで冷えてしまったときには、冷え対策とともに体の熱を上げ過ぎない、という配慮も必要になります。
そこで、体を温める働きがあるアジや鯛などの刺身に、同様に体を温める働きがあるしそを用いて作るカルパッチョなどがおすすめです。料理自体は常温か少し冷えているものを選び、食材が持つ「体を温める」という効能のみでやんわりと体温を上げていくのが得策です。
冷えからくる不調を感じている女性が多いなか、40代を過ぎると、更年期のホルモンバランスの乱れなどからのぼせに悩まされてしまう方が多くなります。このような方には、体を冷やしてくれる効能を持つ食材を選んで食べ、のぼせを解消する方法がおすすめです。
体を冷やす働きがある食材には、以下のようなものがあります。
食材の種類 | 代表的な食材 |
---|---|
肉類・魚介類 | アサリ・ウニ・カニ・シジミ・タコ・合鴨・牛タン・馬肉など |
野菜・果物類 | きゅうり・ 空心菜・ジュンサイ・冬瓜・トマト・なす・アボカド・柿・キウイフルーツ・すいか・バナナなど |
穀類・豆類・種実類 | 粟・オートミール・小麦・ケシの実など |
体に熱がこもっているときには、煮込み料理はあまりおすすめできません。また、気を滞らせ、のぼせを助長する可能性がある揚げ物や炒め物も少し控えた方がよいです。
体に熱がこもり、更年期ののぼせ症状が気になるときには、さっと茹でた野菜で作るスープやサラダ、体力をつけつつも、体の熱を冷ます働きがあるアサリやタコなどの魚介類、鴨肉や馬肉のほか、体を温めも冷やしもしない、豚肉や牛肉を使った料理が向いています。
薬膳が得意とする、体を温めたり冷やしたりする食材の性質やその活用方法についてご紹介しました。薬膳は、数千年の時を経て得たエビデンスから、食材が私たちの体に及ぼす効能を体系化した学問であり、料理方法です。私たちを取り巻く物理的な環境や、季節による冷え方の違いを考慮して、体が冷えている原因を探り、その季節や体調に合わせた調理方法を選びます。
さらに、同じ家族でものぼせやすい方、冷えやすい方がいますね。個人個人で体質や体調が異なるため、取りたい食材も変わってきます。そんなときは、メニューを丸ごと別に作るのは大変なので、少しアレンジするだけでもよいでしょう。
例えば、家族で豆腐を食べるなら、冷えやすい方は体を温める働きがある大葉の千切り、逆にのぼせが出ている方には、体の熱を取ってくれるワカメを添えるなど、トッピングを変えるだけでも、体調に寄り添った薬膳の効能を得ることができるようになります。
はじめのうちから、食事はすべて薬膳で!と気負わず、何か1品、このような考え方で料理を作ってみてください。何日か試してみて慣れてきたら、少しずつ品数を増やしていくことで、無理なく薬膳を取り入れ、毎日をより快適に過ごすことができるようになりますよ。
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