2023.02.11
米は、私たち日本人の食生活に欠かせない主食の一つです。しかし米農家の減少によって、今後、私たちの食生活に大きな影響が出る可能性があります。そこで今回は、米問題に関心がある方に向けて米農家減少の理由について解説し、今後起こり得る問題にも触れていきます。
米農家の減少について、これまで多くのニュースや新聞でとりあげられてきましたが、今もなお減少し続けています。
公益社団法人 米殻安定供給確保支援機構が農林水産省のデータをもとに作成した表「全国の水稲収穫農家数と収穫面積」によると、1965年に約488万戸存在していた水稲収穫農家が、2015年には約94万戸と、5分の1以下にまで減少しています。
はじめに、米農家が減少した理由を3つ挙げて解説します。
米農家減少の理由としてまず挙げられるのが、収益の減少です。ではなぜ、収益が減少しているのでしょうか。
農林水産省の発表によると、1960年から2020年頃までの1人当たりの年間米消費量のうち、ピークである1962年には118.3kgが消費されていました。しかし、2020年頃には53.0kgにまで落ち込んでいます。こうした個人の米の消費量の減少が、米農家の収益減少に繋がっているといえます。
個人の米消費量が減った要因として、食生活の多様化が考えられます。パンやパスタなど、米以外にも主食の選択肢が広がったことにより、米の需要、消費量が減っています。また、近年では人口減少によって日本全体の米消費量も減っていると考えられます。
米の消費量が減った結果、米の供給量が需要量を上回り、販売価格が低下しました。株式会社東京商工リサーチ作成のグラフを見ると、2021年度産米は、歴史的安値となった2014年度産米の価格に迫っていることがわかります。
同じ条件下で同じ量の米を生産した場合、米農家が受け取れる利益が減ることとなり、営農の継続を困難にします。
日本政府は、多くの米が余る状況を受けて、1969年から減反政策という形で米の生産調整を行いました。
本政策は2018年に終了しましたが、この期間、米農家が作物転換を行ったり廃業したりしたため、米農家が減少することとなりました。
かつて日本は米農家を守るために輸入は行わないとしていたものの、1993年に起きた米の大不作により、輸入せざるを得なくなりました。
その後、「ガット・ウルグアイラウンド交渉」によって一定量の米の輸入が義務付けられ、日本は1995年に米の輸入を開始し、その量は年間約77万トンといわれています。
こうした輸入米の存在によって、国産米の消費量の一部は圧迫されることとなりました。
さらに、今後も米作りを継続したい農家にとって大きな問題となっているのが、後継者不足です。少子高齢化が進み、後継者そのものがいなかったり、知見や技術の引継ぎができなかったりと、課題が山積しています。
また、人口減少や職の選択肢が広がっていることも新規就農者が増加しない理由となっています。
米農家が減少していることで、私たち消費者にはどのような問題が起こり得るのでしょうか。ここでは、今後も米農家が減少し続けた場合に考えられる2つの問題を解説します。
農林水産省の発表では、令和元(2019)年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は、38%とされています。
日本を代表する農作物である米の生産量が減ってしまうと、日本の食料自給率はさらに低下します。この場合、日本に住む私たちの食糧の輸入に頼る割合が高くなります。
こうした事態が続き、食糧自給率が低下すれば、日本の“稼ぐ力”が低下するとも言い換えられます。
日本人の主食である米を輸入に頼ることで、日本の食糧は海外の環境や情勢の影響を強く受けることとなります。
天候による生育不良、国際情勢によって空路・海路が断たれた場合などは、輸入量が減ったりなくなったりするでしょう。輸入できた場合でも、価格が高騰することも考えられます。
このように事態が悪化すると、日本全体で食糧不足に陥る可能性があります。
日本が米不足・食糧不足に陥らないよう、日本政府が行っている米問題への対策を紹介します。
近年、日本では米の消費量増加に向けた取り組みを行っています。ここでは、大きく3つの取り組みを紹介します。
農林水産省が主体となり、学校給食等に使用する米の一部に対し、政府備蓄米を無償または有償で交付しています。政府備蓄米は、不作による米不足に備えて政府が保管している米です。
この取り組みを通して、児童や生徒、幼児等に「米の備蓄制度」への理解促進、米食を通じた食育の推進も図っています。
2022年には農林水産省が補助金予算を計上し、米を利用した新たな消費開発等の取り組みの支援を行いました。
新商品に関するアイデアコンテストを実施し、その商品化や事業化に必要な経費の一部を補助するものです。コンテストの実施により、米を使ったドリンクやデザートなどの商品アイデアが生まれました。
この他、各企業でも米を使った商品開発が行われていて、麺やグラノーラなどさまざまな商品に米が用いられるようになっています。
小麦アレルギー、健康志向によるグルテンフリーなどに対応できることから、近年、米粉の需要が高まっています。
また米粉や米粉を使った商品の需要拡大を推進する企業があり、その活動を支援するため農林水産省が補助金事業を実施し、米粉の消費や輸出機会の拡大を図っています。
人手不足、後継者問題の解決策の一つとして、ICT(情報通信技術)を活用した生産の効率化を図っています。先端技術を用いて安定した品質の米の生産を可能にし、コスト削減を実現します。
農作物の生産効率化については、こちらの記事でも触れられています。
https://toritoke.jp/circu/c005/790/
米農家の減少、ひいては日本の米問題に対し、その解消に向けて私たちができることは、大きく2つ挙げられます。
一つ目は、積極的に米を食べることです。米農家の減少の理由となっている米の消費量減少は、私たちひとりひとりの食生活に起因しています。
朝はご飯を食べないという人も、米粉で作られたパンやパンケーキなどを選ぶことで、米の消費に寄与できます。
二つ目は、米を買う際に国産米を選ぶことです。米の消費量を増やそうと積極的に米を食べていても、海外からの輸入米では国産米の消費量は増えません。買い物の際に国産米を選ぶほか、ふるさと納税の制度を活用するのもおすすめです。
私たち自身の食生活を守るためにも、米の問題と向き合い、日本の米農家を支援していきましょう。
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