2023.02.04
SDGsに掲げられている「飢餓をゼロに」は、私たちが2030年までに達成すべき目標のひとつです。しかし現実はその目標達成から離れ、2021年の世界飢餓人口は8億2,800万人にのぼります。
飢餓が起きる原因の多くは、紛争や気候変動による食料危機です。そこで今回は、世界と日本の食料危機の現状や原因について解説し、私たちにできることを考えます。
食料危機とは、世界で起きている食料の不足や偏りなど、食料に関する問題を意味します。
「食糧」と書かれる場合もありますが、「食糧」は主に米や麦などの主食物を指します。一方、「食料」は主食物を含めたあらゆる食べ物を指しています。この記事では食べ物全般の問題を扱うため、「食料」と記載します。
ユニセフの発表によると、食料危機によって、世界では推定4,500万人の5歳未満児が「消耗症」に陥っています。消耗症とは、命を落とす危険性がもっとも高い栄養不良の形態です。さらに、1億4,900万人の5歳未満児が、食事に含まれる必須栄養素が慢性的に不足し、発育阻害に陥っています。
食料危機の原因として、気候変動、紛争、経済危機などが挙げられます。
地球温暖化をはじめとした異常気象によって干ばつや洪水などの自然災害が増え、農作物の収穫量が激減することで、今後、世界の人口に対して十分な食料を確保できなくなる可能性があります。
しかし現代では、世界中の人々の空腹を満たす十分な食料はあるものの、地域や経済力によって食料供給に偏りがあると言われています。
また、仮に食料が十分に確保できている場合でも、近年のウクライナ情勢からわかるとおり、紛争や経済危機が食料供給の停滞や物価上昇の原因となる場合があります。物価上昇が起きた場合、貧富の差によって影響を受ける度合いが異なり、各家庭の経済力だけでなく、国民を支援する立場である国家の経済力も食料の供給量を左右すると言えます。
地域や国家間で起きている食料の偏りは、食料支援、寄付などで解決が期待できます。しかし、気候変動による自然災害の発生は、世界全体が同時に抱えている問題です。
そこで、災害や紛争が起きた場合でも、地域を問わず安定した食料供給が行えるサプライチェーンの構築が必要となっています。
世界で深刻な食料危機が起きている一方、日本でも同様の食料危機は起きているのでしょうか?日本では、海外のような大規模な食料危機は起きていないと言われています。しかしながら、十分な食料が全国民にいきわたっているとは言えない状況にあります。
また日本は食料自給率が低く、多くの食料供給を海外からの輸入に頼っているため、今後、災害や国際情勢によって輸入が止まった場合、日本全体が深刻な食料危機に陥ることが懸念されます。
日本の全国民に十分な食料がいきわたっていない背景には、収入が十分でない家庭への支援が行き届いていないことが考えられます。
支援制度そのものが認知されていない可能性もあるでしょう。しかし、支援を必要とする人が制度を知っていても、周囲に知られるかもしれない、恥ずかしいと感じて申請を躊躇している場合もあり、制度に改善の余地があります。
今後、日本で食料危機が起きるとすれば、その原因として食料自給率の低さが挙げられます。上の図のように、日本の食料自給率は昭和40年以降低下し続けています。
背景には、高齢化、後継者不足などによる生産者数の減少が考えられます。特に、日本の主力生産物である米に関しては、消費量が低下して収入が得にくいこと、大規模な減反政策が行われたことによって、生産者数が大きく減少しています。
食料供給を海外からの輸入に頼っているため、円の動きや国際情勢の影響を受けやすい状況にあり、昨今のような円安や物価高によって、深刻な食料危機が起きる可能性があると考えられます。
日本における食料危機を解決する方法として、まずは収入が十分でない家庭への支援体制を充実させることが必要です。
制度の存在を周知徹底し、必要な人が必要なときに容易にたどりつけるシステムでなければなりません。さらに、申請をためらう人が出ないよう、申請をしなくても生活必需品が届くシステムの構築も求められます。
さらに、日本の食料自給率の向上も欠かせません。令和3年度には農林水産省が食料自給率の目標値を定め、令和12年度にはカロリー(供給熱量)ベースで45%まで向上させることを発表しています。
私たちは政府のこうした動きに着目し、具体的にどのような取り組みを行うのか見ていく必要があるでしょう。
食料危機を回避するため、私たちができることとしてどのようなことが挙げられるでしょうか。ここでは、日本の食料危機への対策を大きく3つ紹介します。
フードドライブとは、家庭で余っている未開封の食料を、地域の福祉団体やフードバンクなどを通じて必要とする人々に届ける活動です。
フードドライブの活動によって食の偏りをなくせるだけでなく、食品ロスを減らすこともできます。近年ではコンビニエンスストアでもフードドライブを行っているため、気軽に参加しやすい取り組みとなっています。
また東京都では、フードドライブを行っている都内自治体をホームページで公開しています。こうした情報を参考に、活動に参加するとよいでしょう。
子ども食堂とは、市民のボランティアが主体となって、地域の子ども達に食事を無償あるいは低価格で提供する場所です。単に食事を提供する場としてだけでなく、普段何らかの事情によりひとりで食事をする子どもに新たな居場所を作る役割も果たしています。
名称には「子ども」とありますが、子を持つ親やひとり暮らしの高齢者にも食事を提供する子ども食堂もあります。食料を必要とする人に届けるという社会的な役割を担っていますが、人手不足や人材不足が運営上の課題となっています。
そこで、私たちはボランティアとして参加したり、お金・食料の寄付を行ったりすることで、子ども食堂の活動を支援することができます。
こちらのサイトでは、支援を求める子ども食堂を必要なもの(食材、スタッフ、資金)別に紹介しています。支援したい場合は、ぜひ参考にしてください。
また、子ども食堂についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
日本の食料自給率を上げる対策のひとつとして、生産者を支援し、生産者数を減少させないことが挙げられます。国内の食料生産者減少の原因は、高齢化や後継者不足、収入低下によるものです。近年では、IT技術の活用によって生産者不足をカバーする取り組みが行われています。
このほか、私たちにできる国内の食料生産者支援として、米をはじめ国産の食材を率先して購入することが考えられるでしょう。
世界で大規模な食料危機が起きているなか、日本でも必要な量の食料が満足に届いていない人がいます。現在の世界情勢や気候変動を鑑みると、日本で深刻な食料危機が起きる可能性もあります。
私たちは世界で起きている食料危機を知り、寄付をしたり食品ロスを生まない努力をしたりするほか、日本の食料危機への対策としてひとりひとりができることに積極的に取り組んでいきましょう。
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