食品ロス問題が自然や私たちの生活を脅かす?コンビニ主要3社が行う独自の対策とは?|circu.(サーキュ)

2022.07.20

食品ロス問題が自然や私たちの生活を脅かす?コンビニ主要3社が行う独自の対策とは?

コンビニエンスストアは、いつでも気軽に欲しいものが買える便利な場所です。治安維持や災害時支援など社会的役割も担っていて、私たちの生活に欠かせないものとなりました。

しかしコンビニエンスストアでは、毎日多くの「食品ロス」が発生しています。まだ食べられるにも関わらず捨てられる多くの食品が、自然環境や私たちの生活に大きな負担を与えます。

そこでこの記事では、コンビニエンスストアで発生している食品ロス問題に関心がある人に向けて、現状や主要3社が行っている対策について紹介します。

コンビニエンスストアで起きている食品ロスの現状

コンビニエンスストアでは、1年間に約20~30万トンの食品が廃棄されています。

農林水産省の発表によると、国内における、平成30年度時点の食品廃棄量は約600万トンです。つまり、コンビニエンスストアで廃棄される食品の量は、国内の食品廃棄量の約3~5%に相当します。

過剰な食品ロスの発生による問題

コンビニエンスストアで発生する食品ロスによって、大きく3つの問題が生じます。

1つ目は、環境に対する問題です。

廃棄する食品をリサイクル施設や廃棄場まで輸送する際、CO2が排出されます。また、廃棄食品を燃やすことで更にCO2が排出され、地球温暖化の加速に繋がります。

2つ目は、私たちの暮らしに対する問題です。

廃棄食品を運ぶ、燃やす、あるいはリサイクルする場合でも、費用がかかります。発生する費用は、商品の価格に上乗せされ、やがて私たち消費者が負担することとなります。

3つ目は、倫理に対する問題です。

2021年に国連WFPが発行した報告書では、世界の飢餓人口は最大8億1100万人と推計されています。一方で、人口約1.2億人(2020年時点)である日本の食品ロス発生量は、世界第3位です。

世界で多くの人が飢えに苦しむ傍ら、日本が相当量の食品を捨てていることは、倫理においても再考すべき問題です。

コンビニエンスストアで食品ロスが起きる原因

コンビニエンスストアで食品ロスが起きる原因

コンビニエンスストアにおける食品ロス発生の背景には、店舗ごとの値引きが行いづらい、賞味期限が近いあるいは切れた食品をスタッフに渡せないなどの事情があります。このほか、大きく2つの原因が考えられます。

「3分の1ルール」の存在

食品には、「3分の1(さんぶんのいち)ルール」と呼ばれる特有のルールが存在します。卸売業者、小売店、消費者で賞味期間を3分割する考え方が、名前の由来となっています。

このルールにより、卸業者は、小売店に賞味期間の3分の1以内で納品する必要があります。納品前に賞味期間のうち3分の1を超えてしまった食品は、まだ充分に食べられる状態でありながら廃棄されることになります。

大量陳列

コンビニエンスストアは消費者にとって、緊急性と必要性が高いもの、あるいは何となく立ち寄って目についたものを買う場所です。

そこでコンビニエンスストアは、消費者のニーズを満たすために、消費者が欲しいと思うものがいつでもある状態を保つ必要があります。

そのため、欠品のないよう大量に発注し、大量陳列を行います。このサイクルが余剰在庫を生み出し、食品ロスの原因となるのです。

コンビニエンスストア主要3社が行っている食品ロス対策

近年、食品ロス削減のために行う取り組みとして、食品メーカーは商品に印字する賞味期限を従来の年月日表示から年月表示へと変更しています。

では、コンビニエンスストアではどのような対策を行っているのでしょうか。
店舗数の多いセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの主要3社について、共通で行われている対策と各社独自で行われている対策をみてみましょう。

3社共通で行われている対策

大手コンビニエンスストア3社は、慣例的に行われてきた「3分の1ルール」を見直し、現在は納品期限の緩和を行っています。農林水産省も「3分の1ルール」の見直しを呼びかけ、2020年10月時点では、計142の小売事業者が納品期限の緩和を行っているまたは行う予定です。

恵方巻やクリスマスケーキなどの季節商品は予約販売を強化して、店頭の陳列数を減らしています。また、プライベートブランドと呼ばれる自社製品の販売を開始。賞味期間の長い、ロングライフ商品の開発製造を行っています。

さらにフードドライブの活動も行い、周辺地域で発生する食品ロス削減にも努めています。フードドライブとは、各家庭で食べきれない未開封の食品を回収し、フードバンク団体や地域の福祉施設などに寄付する活動です。

コンビニエンスストアが回収拠点となることで、消費者にとって食品の寄付が身近なものとなり、捨てずに寄付するという選択ができるようになりました。

セブンイレブン

セブンイレブンでは、食品ロス削減への独自の取り組みとして、「エシカルプロジェクト」を開始しました。

「エシカルプロジェクト」では、販売期限が近いことを知らせるステッカー付き商品を購入すると、「nanaco(ナナコ)ポイント」が付与されます。

「nanacoポイント」は電子マネーとして、1ポイント=1円で次回買い物で利用可能です。店舗は食品ロスを減らすことが出来て、消費者はお得に買い物が出来るため、両者にとってメリットのある取り組みとなっています。

ファミリーマート

ファミリーマートでは、冬期にレジ横で温めているおでんの販売方法を見直しました。

従来は大きなおでん鍋で、常に温めた状態で販売する方法でした。しかしこの方法では保温状態が続き、見た目も味も質が低下し、ロスに繋がります。

そこで、大きなおでん鍋での保温販売をなくし、注文を受けてから個別にレンジで温める方式へ変更しました。これにより、ムダなロスがなくなっただけでなく、電力の節約も実現出来ました。

ローソン

ローソンは2015年から「セミオート発注」を導入し、いち早く食品ロス削減に取り組んでいます。

「セミオート発注」では、AIが店舗ごとに過去の売上や客層、天気予報などの情報を分析し、適切な発注商品、発注数を割り出し、提示します。

このシステムによって適正な発注が行われ、食品ロス削減に繋がっています。

コンビニエンスストアの食品ロスを減らすために出来ること

コンビニエンスストア各社がさまざまな工夫で食品ロス削減を行うなか、私たちひとりひとりが出来ることもあります。例として、農林水産省が提唱している「てまえどり」があります。賞味期限の長い商品を求めて、商品を陳列棚の奥の方からとるのではなく、手前から買って賞味期限内に食べきるようにしましょう。

また、家庭での食品ロスを減らすため必要量だけを買い、食べきれないものは小分けにして冷凍するなど、最後まで食べきる工夫をしましょう。

コンビニエンスストアへは、欲しいものが決まっていない状態でふらりと立ち寄ることもあるでしょう。そのため、衝動買いをしやすくなります。迷ったら買わない、家にあるものを思い出すなど、本当に必要かどうか一息おいて考えることが大切です。

“賢い”買い物で コンビニの食品ロスを減らそう

コンビニエンスストアで発生している食品ロス問題は、私たち消費者もその発生原因の一端を担っています。消費者の需要がなければ、メーカーが製造し、コンビニエンスストアが販売することはないからです。このことは、食品だけでなく、アパレルでも同じことが言えます。

必要なモノを必要な分だけ買う生活を送れば、ロス削減に貢献できるだけでなく、節約にも繋がり、自分自身のメリットにもなります。

また、よりマクロな視点で見れば、環境負荷を抑えて長く住める環境となることもメリットと言えます。そうした想像力を膨らませた”賢い”買い物で、食品ロスを減らしていきたいものです。

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