2023.03.18
近年、コオロギをはじめとした昆虫食が注目を集めています。環境負荷の低減や食糧不足の解消を通じて私たちの生活を守り、持続可能な未来を築くことが期待されています。
そこでこの記事では、昆虫食に関心を持つ方に向けて、昆虫食の安全性、メリットとデメリットを詳しく解説するとともに、昆虫食を取り入れる前に私たちができる環境に配慮した行動についても触れます。
これを読むことで、昆虫食の可能性を理解し、より持続可能な食生活を検討するきっかけになることでしょう。
昆虫食に対する注目度の高まりは、国際連合食糧農業機関(FAO)が2013年に発表した報告書において、昆虫食の食品として、さらに飼料としての可能性に言及したことが背景にあります。
この報告書では、多くの昆虫はたんぱく質、良質な脂肪、カルシウム、鉄、亜鉛が豊富で、鶏肉や豚肉、牛肉、魚貝類の代用となるとしています。さらに、昆虫を飼育して食べることは環境負荷が小さいことにも触れています。
その他にも以下の内容が紹介されています。
こうしたことから、今後起こると言われる世界的な食糧不足の解決策として、昆虫食が注目を集めています。
また、2030年までの達成を目標としているSDGsのうち、「2. 飢餓をゼロに」「3. すべての人に健康と福祉を」などの達成に寄与すると期待されています。
昆虫食が文化として根付くには、安全性の確保が必要です。ここでは、昆虫食に関する懸念点を紹介しながら、安全性について解説します。
内閣府の食品安全委員会が公表している情報によると、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)で、昆虫が新たなアレルゲンとなる可能性について2020年から議論が行われています。
その結果、昆虫が原因で引き起こされるアレルギー症例の記述はごくわずかではあるものの、共通の祖先遺伝子をもつため構造の類似したたんぱく質が増えることで、節足動物(甲殻類やイエダニを含む)による交差反応(すでに体がもっているアレルギーと構造の似たものにもアレルギー反応が起こること)が生じる可能性が高いことが報告されました。
日本では現状、アレルギー品目として指定されていません。しかし昆虫には、甲殻類アレルギーの主な原因となる「トロポミオシン」というたんぱく質が含まれています。BfRの情報も踏まえると、甲殻類アレルギーを持つ人は、交差反応が起こる可能性があるため、昆虫食を避けた方が安全であると言えます。
養殖されたものでなく、自然にいる昆虫を原料とした食品の場合、昆虫がどのような環境で何を食べて育ったのかわかりません。人間にとって毒性のあるものを食べている可能性もあります。そのため、昆虫食品を購入する際は、安全な環境下で養殖を行っている生産者から購入する必要があります。
昆虫食を食べる際には注意がいるものの、環境や私たち人間にとって大きなメリットがあります。ここでは、昆虫食のメリットを挙げて解説します。
同量のたんぱく質を生産するために必要な飼料の量は、昆虫は豚肉の4分の1、牛肉の12分の1であり、また昆虫により排出される温室効果ガスの量は豚の約10分の1、牛の約400分の1とされています。
このように少ない資源で確保できるため、環境に与える負荷は小さいと言えます。
昆虫は、アミノ酸やビタミン、ミネラルなど豊富な栄養素を含んでいます。また、現在は昆虫を原料とした商品開発が進み、さまざまな形・味付けでの販売も増えてきているため、好みに合わせて栄養を摂取できる点もメリットとなります。
昆虫は種類によって、1週間から1か月ほどで成長し、出荷できるようになります。このため、出荷までに数年かかる牛や豚と比べて効率よく供給することができます。
また、パウダー状にしたりペースト状にしたりと加工しやすいため、食品に振りかけたり、練り込んだりすることができ、汎用性の高さもメリットと言えます。
昆虫食にはメリットがある一方、デメリットもあります。2つのデメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
昆虫食への抵抗感として、2つの要因が考えられます。
1つ目は、昆虫に対する先入観です。見た目や、昆虫=食べ物という概念がないことから、どうしても抵抗感が拭えず手が出せない人が多いのではないでしょうか。
2つ目は、価格が高いことです。現在はまだ、他の食品と比較すると昆虫食への需要が低い、また安全な食材として昆虫を大量に確保することが容易ではない、などの理由から昆虫食の価格は高い傾向にあります。
このような理由により、購入への抵抗感が生まれやすくなっています。
甲殻類アレルギーを持つ人は、すでに解説した交差反応により、昆虫を食べた際にも同じようにアレルギー反応が出る懸念があります。
また、NPO法人食用昆虫科学研究会 副理事長 水野 壮氏は、昆虫食による食中毒の危険もあるとしています。食中毒を引き起こす原因の一つであるサルモネラ菌が、昆虫の体内にも生息するためです。ただし、加熱処理をはじめ、適切に処理されたものを食べる場合は、問題ありません。
ここでは、昆虫食の開発や普及に向けた取り組み事例を紹介します。なお、こちらの動画では、昆虫食が注目される背景や企業の取り組みについてわかりやすく解説されています。ぜひ、ご覧ください。
昆虫食専門の会社として東京都台東区に店舗を構え、販売や製造、研究開発、養殖まで行っています。野菜、魚、肉などと同じように、昆虫が食として楽しまれる豊かな食卓の実現を目指して、トノサマバッタの食料利用に関する開発やコオロギ、その他食用昆虫の養殖技術開発、応用研究なども実施しています。
シンプルなデザイン、質の良い商品で知られる「無印良品」で有名な株式会社 良品計画では昆虫食に着目し、徳島大学と連携してコオロギ粉末入りのチョコとせんべいを開発、販売しています。
販売店舗・数量限定ですが、2023年2月現在でも在庫のある店舗があります。
昆虫食には、今後起こりうる食糧不足への対策として大きな期待が寄せられています。
ただ、これまであまり食べることのなかった昆虫食を受け入れるという選択の前に、世界的な食糧不足を未然に防ぐ、あるいは鈍化させるために、私たちにできることを紹介します。
各家庭で野菜を育てることには、食糧の確保、農薬の不使用、CO2排出量の削減など多くのメリットがあります。物価高が長期化するなか、食費の節約効果も期待できます。
人が生きるうえで、たんぱく質の摂取は欠かせません。しかし、たんぱく源となる牛や豚を育てるには多くの水や飼料が必要となり、環境に大きな負荷がかかります。一方、必要なたんぱく質は大豆をはじめ豆類で補うことで、環境への負荷を小さくすることができます。ただし、できる限り国産のもの、無農薬のものを選びましょう。
「昆虫食」という選択肢の登場は、私たちの食生活を見直すきっかけとなっています。地球に優しい昆虫食は、今後、私たちに欠かせない食糧・栄養源となるかもしれません。
しかし、昆虫を食べることへの抵抗感がどうしても拭えない人もいるでしょう。こうした人への食の選択肢も残るよう、私たち一人ひとりが食糧不足の根本的な解決策について引き続き考え、行動していきましょう。
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