ディーセントワークとは?企業の取り組み事例やSDGsとの関連を解説|circu.(サーキュ)

2024.04.14

ディーセントワークとは?企業の取り組み事例やSDGsとの関連を解説

ディーセントワークとは?企業の取り組み事例やSDGsとの関連を解説

各企業が働き方改革を進めるなか、「ディーセントワーク」が注目を集めています。働きがいのある人間らしい仕事を指す概念で、SDGsとも関連の深い言葉です。「働きがい」「人間らしい」といった言葉は抽象的であるため、ピンとこない方が少なくないのではないでしょうか。そこでこの記事では、ディーセントワークとは何か、企業の取り組み例も交えて解説します。

ディーセントワークとは

ディーセントワークは、「きちんとした」「まともな」といった意味を持つ「ディーセント(Decent)」と「仕事」の意味を持つ「ワーク(work)」をあわせた造語で、日本では働きがいのある人間らしい仕事と訳されます。

ただし、「働きがいがある」「人間らしい」という表現は主観的かつ抽象的であることから、厚生労働省が以下の4つに整理しています。

(1)働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること
(2)労働三権などの働く上での権利が確保され、職場で発言が行いやすく、それが認
められること
(3)家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療・年金制度な
どのセーフティネットが確保され、自己の鍛錬もできること
(4)公正な扱い、男女平等な扱いを受けること

また、厚生労働省は、各企業においてディーセントワークに関する取り組みがどの程度行われているか、またディーセントワークを実現できる職場であるかといった判定を行う目的で、7つの評価項目を示しています。

この評価軸は、ディーセントワークをより深く理解するうえでも助けとなる項目です。

(1)WLB軸:「ワーク」と「ライフ」をバランスさせながら、いくつになっても働き
続けることができる職場かどうかを示す軸
(2)公正平等軸:性別や雇用形態を問わず、すべての労働者が「公正」「平等」に活
躍できる職場かどうかを示す軸
(3)自己鍛錬軸:能力開発機会が確保され、自己の鍛錬ができる職場かどうかを示す

(4)収入軸:持続可能な生計に足る収入を得ることができる職場かどうかを示す軸
(5)労働者の権利軸:労働三権などの働く上での権利が確保され、発言が行いやす
く、それが認められる職場かどうかを示す軸
(6)安全衛生軸:安全な環境が確保されている職場かどうかを示す軸
(7)セーフティネット軸:最低限(以上)の公的な雇用保険、医療・年金制度などに
確実に加入している職場かどうかを示す軸

ディーセントワークが生まれた経緯

ディーセントワークの概念は、1999年の第87回ILO(International Labour Organization、国際労働機関)総会に提出された事務局長報告で用いられたのが始まりです。さらに、ILOの活動における目標として提案され、主目標に位置付けられました。

SDGsとの関連性

ディーセントワークには、SDGsと深い関連があります。

具体的には、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標として掲げられている17の目標のうち、8番目にある「働きがいも経済成長も」において、ディーセントワークの促進がうたわれています。

「働きがいも経済成長も」には年齢や性別を問わず、人間らしく同一価値の労働についての同一賃金を達成することや、労働者の権利の保護などが明文化されています。

ディーセントワーク確保に向けた取り組みの具体例

労働者がディーセントワーク、つまり働きがいのある人間らしい仕事に就くには、政府や企業が環境を整備する一方、労働者自身もそうした環境を追求する必要があります。

2009年にILO駐日事務所が実施したシンポジウムでは、ディーセントワークを確保するために政府、労働組合、使用者がそれぞれ果たすべき役割について意見交換が行われました。

そのなかで、政府が行うべき中長期的な取り組みとして、以下の項目が挙げられました。

・非正規雇用の若者などの雇用対策
・生涯を通じたワーク・ライフ・バランスの実現
・働きがいのある仕事の創出

また、使用者となる企業が取り組むべき課題として、以下の項目が挙げられました。
・新たな雇用の創出
・個々の労働者のモチベーションを高めるとともに組織の生産性向上につなげていく働き方

労働者自身がディーセントワークに就くには、企業が抱えている課題を既に解決している、または解決に向けた努力をしていることを確認したうえで就職先を選択するのが良いでしょう。

ディーセントワーク確保に向けた企業の取り組み事例

ここからは、ディーセントワーク確保に向けた取り組みを導入している企業のうち、主な2社を紹介します。

パナソニック株式会社

生活家電や美容家電を製造するパナソニック株式会社では、社会課題の取り組みの一環として「人権が尊重される社会づくりへの貢献」を掲げて、人権尊重とディーセントワークの確保を目指した取り組みを推進しています。

一例として、外国人移民労働者を含む労働者の権利保護や労働安全衛生管理に取り組んでいます。さらに、リモートワーク制度の新設、社員の勤務形態や属性を問わず年次有給休暇を半日単位・時間単位で取得できる制度への改定など、多様な⼈材が挑戦し活躍できる環境づくりを実施しています。

サイボウズ株式会社

ソフトウェア開発を行うサイボウズ株式会社では、「100人いたら100通りの働き方」の考え方のもと、メンバーそれぞれが望む働き方を実現できるようさまざまな制度を設けています。

育児・介護休暇制度や在宅勤務制度の導入だけでなく、退職から最長6年間は復職可能とする「育自分休暇制度」の創設、他部署への体験入部を認める「大人の体験入部」「子連れ出勤制度」の導入など、従業員の多様なニーズに応える制度が整っています。

その結果、離職率が改善し、2005年に過去最高となってしまった28%から、現在は3-5%程度にまで低減できました。

ディーセントワーク確保のため私たちにできること

私たちがディーセントワーク確保のためにできることは、自身にとってのディーセントワークを追求し、妥協しないことだと言えます。

まずは労働基準法をはじめとした法令内容を知り、万が一、法令違反があった場合はきちんと主張し、上司や所属する企業と対話することが重要です。

デーセントワークでより働きやすい社会へ

私たちがディーセントワークに就いた場合、仕事への満足度が向上して生活の質が向上するほか、企業に対する信頼度や共感度が高まります。

その結果、企業にとっても離職率の低下、定着率の上昇による採用・人材育成にかかるコスト削減、優秀な人材の確保といったメリットがもたらされます。

このように、労使双方にプラスの影響があることから、従業員に対するディーセントワーク確保に取り組む企業が増えると考えられます。それがひいては、私たちにとってより働きやすい社会へとなることにつながるのではないでしょうか。

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