2021.05.21
「女性の社会進出」というワードが時代遅れと感じるほどに働く女性が増えている今日。男女平等やそもそも男女の区別をすること自体が疑問視されつつある世の中ですが、やはり生物学的な違いからも女性のキャリア構築は男性とは異なる課題があります。今回は新しい時代の女性の働き方について、ミレニアル世代の視点から考えていきたいと思います。
総務省の労働力調査によると2019年女性の労働力人口は 3,058 万人と前年に比べ 44 万人増加しています。また、労働力人口総数に占める女性の割合は 44.4%となり、過去最高を更新しています。
(引用:令和元年版働く女性の実情|厚生労働省 図表1-2-1 労働力人口及び労働力人口総数に占める女性割合の推移(PDF))
働く女性が増加している背景には少子高齢化による労働力不足や労働意欲の高まり等様々な要因があります。しかし、働く女性が増加しているという点だけを見て、女性活躍社会の実現が目前であると楽観視はできない状況にあります。
社会的制度の問題や無意識の偏見、差別等女性が働く上での様々な障壁が存在しているのは紛れもない事実です。この障壁は近年、スポーツ界を中心に表面化しており、日本のジェンダー平等の遅れが世界中にも知れ渡っています。
しかし、このような状況は変革のチャンスでもあるのではないでしょうか。日本の常態化した男性社会に疑問を感じ、特に1980年~1995年生まれのミレニアル世代以降の多様性を認める価値観を持ったZ世代の方々も社会に出始めている今、みんなが気持ちよく働いていくために社会は確実に変わる必要があります。
令和の働く女性の現状を数字で見てみましょう。女性の就業割合は男性に迫る勢いであるものの、半数以上が非正規職員であることがわかります。
また、女性管理職の割合も10%以下と男女平等とはほど遠い数であることがわかります。
・女性の就業者数と割合
2,957万人(男性3,690万人)で全体の44.5%
(引用:総務省統計局|労働力調査 令和3年2月データ(PDF))
・女性管理職の割合
平均7.8%
(引用:株式会社 帝国データバンク|女性登用に対する企業の意識調査)
・非正規の職員・従業員数と割合
女性雇用者総数に占める「非正規の職員・従業員」の割合は53.5%(男性は21.8%)
様々な研究や調査からもやりがいのある仕事をしたい、長く働き続けたいと思う女性は少なくないことがわかっています。しかし、ライフステージの変化によって仕事を辞めなくてはならなくなったり、パートタイムの非正規職員にならざるを得なかったりとキャリア構築が難しい現状があります。
女性が働く上で障壁になっているものは大きく分けて3つあります。
社会の中で常態化した性別による役割分担や無意識の差別は女性が働きづらいと感じる大きな要因となります。
女性若手社員は経験が少なく、消極的だから意見は重視しない、女性は論理的ではない等無意識に個人ではなく、女性という性別でカテゴライズしている人は多いのです。
女性自身でさえ、女性という型に自分をはめ込んで窮屈な思いをしている人も少なくありません。女性自身と社会の双方で無意識の偏見や差別を認識し、崩していくことが必要です。
結婚、出産、育児などのライフステージの変化が起こる時期とキャリアを築いていく大切な時期が重なった時、仕事とプライベートを両立できる制度がまだまだ不十分です。
また、女性だけでなく、男性も育児休暇などを積極的に取得できる雰囲気を社会全体でつくっていくことが必要です。
女性の管理職割合が10%にも満たないという調査結果の通り、プライベートと仕事を両立し、さらに役職についているという女性は多くありません。管理職になると業務時間が長く、プライベートとの両立が難しいという印象が大きく関わっていることも事実ですが、プライベートも大切にし、仕事と両立している女性もいらっしゃいます。
自分にもできるという気持ちを持つためにはやはり身近にロールモデルとなる存在がいることは重要です。
女性が働きやすい環境とはいったいどんな環境なのでしょうか。ジェンダー平等、女性活躍先進国のこれまでの歴史と取り組みを参考に、今日本に必要なものを考えていきたいと思います。
世界経済フォーラム(WEF)が各国のジェンダー不平等状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2021」の中で公表している2021年版「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」でベスト3に輝いたアイスランド、フィンランド、ノルウェーの北欧3ヵ国の取り組みについてご紹介します。
ちなみに日本は156ヵ国中120位でG7(主要7ヵ国)で昨年に引き続き最下位となっています。
1975年10月24日、アイスランドで「女性の休日」と呼ばれる大規模なストライキがありました。男女の給与格差や性別の役割分担に抗議し、国中の女性約9割が参加したと言われています。仕事や家事をやめた女性たちは、街に出て集会などを開催しました。
男性たちは家庭も社会も男性だけでは成り立たないことがわかり、女性たちも自分たちが社会を支える一員だということを認識し、自信を持つことができた日となりました。
変化を求める女性たちが勇気を出し、一丸となって声を挙げたこの一日があったからこそ、アイスランドではジェンダー平等の意識が根付いているのでしょう。
インクルーシブ教育というと日本では、障がいのあるなしに関わらず誰もが尊重し合い支え合う共生社会ヘ向けた多様な学びの場。というような表現をされることが多いです。
しかし、誰もが尊重し合うのであれば、障がいのあるなしというような限定的な言葉を使う必要はないと私は思います。
スウェーデンの幼児期からのインクルーシブ教育で徹底して教えられているのが、民主主義の基礎と人間の価値の平等です。
民族や言葉、性別、障がいのあるなしに関わらず、自分にも、周りのひとたちもみんな平等で、同じ価値があるということを、最初の教育を受ける場である就学前学校学びます。
ノルウェーが1993年に始めた制度で、育児休暇のうちの6週間は父親のみが取得でき、父親が取らなければ、手当が消滅してしまうという制度です。育休中の手当は、最長54週間取得した場合は給料の80%、44週間までは100%が支給されます。
この制度の導入を機にノルウェーの男性育児休暇取得率は7割を超えています。
女性が働きやすい環境づくりを企業に求める法律です。具体的には下記3つの実施を定めています。実施義務は従業員数が301人以上の企業です(2022年4月からは従業員数101人以上の企業に)。
① 自社の女性の活躍状況の把握・分析
② 上記①の課題解決のための数値目標と行動計画の策定および届出
③ 自社の女性活躍に関する情報の公表
取組の実施状況が優良な企業には、厚生労働大臣から「えるぼし認定」という認定を受けることができ、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなどといったメリットがあります。就職活動中の方は是非、この「えるぼし認定」の有無も検討材料に加えてみてはいかがでしょうか。
女性がいきいきと働きつづけるために必要なこととして3点挙げたいと思います。
テレワークによる通勤時間の削減、時差通勤、時短勤務(一日6時間労働、週休3日)での正社員登用、副業の自由。世界ではこのような働き方が当たり前となりつつあります。奇しくもコロナ禍の影響により、日本もこれまで長年続いていたグローバルスタンダードに乗り遅れた働き方が急速に変革しています。このチャンスを生かさない手はないはずです。
これから家庭を持つ世代の中心になっていくであろうミレニアル世代以降は共働きは当たり前で、男女平等の意識が比較的強いです。必要なのは社内に産休・育休を取りやすい風土をつくることと周囲の理解です。
日本社会には無意識のうちに男性の仕事、女性の仕事と固定観念が根付いている現状があります。ミレニアル世代以降の若者たちはこうした考えが薄れ、多様性と共感、共有の世代となりつつあります。せっかくの新しい価値観を現在の常態化した日本社会の価値観に染めるのではなく、若者のアイディアを取り入れてみませんか。
女性を含め、みんながいきいきと働き続けられる環境にしていくためには、制度はもちろんのこと、一人ひとりの意識改革が非常に重要です。いくら制度を整えたところで一人ひとりの意識変革がなされなければ、制度は役に立ちません。
性別による役割分担意識のような固定的な考えを見直し、男性女性と分けるのではなく、一人の同じ人間としてその人の個性を認め、リスペクトし合いましょう。これまでもこれからも性別に関わらず、一人ひとりが社会や誰かにとって、なくてはならない存在なのです。様々な価値観、才能や個性が集まることで社会はより良いものになっていくはずです。
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